カクヨムコン5、おめでとうございますと、ありがとうございました
「え? 休暇が出る?」
一日の仕事を終え、自室へ向かおうとしたロスを呼び止めたカエルムは、つい先頃思いついたことを自分の右腕に打ち明けた。
「以前、ロスがまとまった休みを取れたのはいつだったかと思ってな。日頃、私についているからほとんど休みなしだろう?」
「それ言ったら殿下じゃないですか。それこそ毎日、執務室に行かない日はないでしょう。出かけると言っても仕事絡みですし」
呆れ顔で返す従者の手にもまた、明日の朝儀の議事録がある。眠気がないわけではないが、新王即位後は何かと用事が多い。それらを見ても為政者二人の担当が多すぎるのだ。従者である自分が休んでいる場合ではない。
そう思うのだが、カエルムは珍しく困り顔で笑った。
「少しくらいは休んだ方が効率も上がるとよく言う。冬からの祭典も全て終わったではないか。めでたい結果になったし、この度培われたものは大きかったから、その礼も含めて。私は適当に息を抜いているから構わんよ」
「そうは仰いますけどねぇ」
「というわけで、いつ頃がいいか考えておいてくれ」
どうも腑に落ちないものの、カエルムはすぐに踵を返して廊下を行ってしまう。——休み、か。テハイザの騒動も終わり、ひと段落ついたのだ。確かに、この辺りで一息入れても悪くない。殿下には悪いけれど。
ロスがそう思った時である。
カエルムのいでたちに違和感を覚えた。
もう寝室へ向かっていい時間のはずなのに、いつもこの時間に纏っている室内着ではない。しかも偉く軽装——まるで市井の若者のような……
「あぁっ! ちょっと殿下、また城下に抜け出しですか!」
「私は適当に息抜きをしていると言ったはずだ」
「だからってもう一人でまた……だから姫様が真似するんですよ!」
「ではお前も一緒にどうだ? 先頃、宿屋街の料理店の主人から、そろそろ来いと誘われていて」
「ああもう、はいはいはいはい……」
気安く王族を誘うなよ、と内心で愚痴りながら、急いで上着を取りに走る従者であった。
今宵、久方ぶりに主人と杯を交わすのが楽しみであることは、絶対に口にしないが。
***
遅ればせながら、カクヨムコン5の結果発表が出ましたね!
受賞の皆様、本当に心よりお祝い申し上げます。
おめでとうございます!
またこのコンテストを機に、『天空の標』、テハイザ王国へご旅行の読者様、短編参加した『魔法の隠し味はいつも君が』の響子のコンサート、匠のショコラティエに足を運んでくださいました方々、『未来世紀以外全部真実』のおばあさんの家への石畳を歩いてくださった方、ありがとうございました。
たくさんの読者様、書き手様と出会えましたことも、嬉しく思います。
カクヨムコンは終わりましたが、カクヨムは続けると思います。
どうぞ、このご縁を元に、お付き合いいただけましたら幸いです。
シレア・テハイザのシリーズは続く予定。番外編もすでに2つ。未紹介でしたものだけここに置いていきます。
「秋祭りの妖精」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894505856
そろそろ三つ目に入ろうと思っております。
あ! シレア国の王女の「時の迷い路」の方へも、テハイザから足をお運びいただきまして、こちらも重ねて感謝申し上げます。王女が喜んでおります。
それでは、この体験記、遅ればせながら終わりにしたいと思います。
最後まで、シレア王城にご逗留、ありがとうございました!
星の導きは不変ならずや〜カクヨムコン体験記〜 蜜柑桜 @Mican-Sakura
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます