あとがき

 犯罪者に近い女刑事と人殺しはビジネスと語る殺し屋のラブミステリーシリーズがついに始まりました。

犯罪者に近い刑事~とか殺し屋~とか、なんて物騒なテーマなんだと自分でツッコミしておりますが、物騒ながらもラブもミステリーも両方あります。


 ミドエンシリーズで扱う事件はフーダニット(Who=誰が殺したか・犯人当て)やハウダニット(How=どうやって殺したか・犯行方法)ではなく、ホワイダニット(Why=なぜ殺したのか・殺人動機)に重きを置いています。


 一応は警察小説ですが、警察内で使用される隠語は認知度もあるわかりやすい言葉だけを使用しています。


あまりにもマニアックな隠語を入れすぎるといちいち説明も付け加えなければなりませんし、脚注もなしに「マル害」(被害者)や「マル被」(被疑者/容疑者)なんて会話文に出てきてもミステリーやサスペンスものを読み慣れていない方にはなんのことだかさっぱり……になってしまいますからね💦


 警察小説を書く上で一番苦労したのは警視庁内部の描写です。

警視庁は建物内部の構造を公表していないから、わかっているのは警視庁は地上18階、地下4階、エレベーターが18基あるってことだけで……。


捜査一課って何階にあるんですかねぇ。作中たまに登場する渡り廊下ってありますかねぇ。

私の勝手なイメージだと捜査一課は6階から8階、なんとなく建物の真ん中にありそうで、そのつもりで前作の早河シリーズもミドエンシリーズも書いています。

美夜と九条はたぶん警視庁の6階から8階のどこかにいます。笑


 このシリーズで私が表現したい感情は喜怒哀楽の怒と哀、人間の負の一面。

私は性悪説よりの考えなので『負』があるからこその人間らしさ、負があるからこそ『正』が生きると思っています。


負の感情がない人間はいません。

嫌いな人も、憎悪を向けている人も、あんな人いなくなればいいのにと思った経験も、何年も人間やっていれば多少はありますよね。


シリーズに登場する誰かの『闇』の感情はもしかしたら身に覚えのあるご自身の闇かもしれません。


 【春雷】のプロローグとエピローグはセットでこのシリーズのテーマを込めています。

エピローグがかなり胸糞悪くてすみません💦


エピローグは物語の余韻と少しの謎を残しつつ基本ハッピーエンド派なのですが、ミドエンシリーズのエピローグは余韻と謎と胸糞が混ざる憂鬱エンドになりがちです。


 楓の夫の井川が殺人を依頼した楓殺しの犯人、エイジェントとは何者なのか?


【episode0.片翼】から続く「殺してくれてありがとう」がこのシリーズの核です。

萌子の佳世への殺意は陣内が、井川の楓の殺意はエイジェントが受け取って代わりに殺害を実行してくれました。


 エイジェントの正体は話が進むにつれていずれ判明しますので、正体を推理しながらその時をお待ちください。

そしてエピローグで語られた〈ある犯罪組織の帝王〉とは誰でしょうね??😂


 W主人公の片割れの愁は初回から冷酷に淡々と人殺してますね……。

愁パートであるAct1の最後の4ページは書き上がりまで1週間かかりました。あの4ページで読者の愁への印象が決まるようなものですからね。


 鈴菜ちゃんには愁は止めておけと作者からも言いたい。君が苦肉の策で話題にした立川で銃撃ちまくって人殺した犯人はそこにいるんだけど……。


自分がやった犯罪の話を愁は涼しい顔してしれっと聞いてましたね~。

これがミステリーじゃなければ、鈴菜を主役にした愁と鈴菜のオフィスラブでも楽しいかもしれませんが。ミステリーなのでね😂


 群像劇の構成も取り入れていて、ストーリーは大まかに三つのパートに分かれています。


①美夜パート(メインが美夜。他、九条を含めた警察側の視点。事件捜査が主体)

②愁パート(メインが愁。他、伶と舞の視点。殺し場面や夏木コーポレーション場面が主体)

③事件パート(事件関係者視点。その物語で起きる事件主体)


①と②の配分によっては物語全体が美夜メインの話になったり愁メインの話になったりしますね。【春雷】はビミョーに美夜メインかな。


 表の主人公の美夜と裏の主人公の愁のW主人公組の今後の関係、美夜と九条のデコボコバディの刑事組のやりとりもシリーズの見所です。

今後は愁の出番も増えます!


 美夜の出身大学である国立大は作中では名前は伏せてますが東大じゃなく一橋大学です。

国立大の偏差値としては同ランクだから東大でも良かったんですけど、私の美夜のイメージが東大っぽくなかっただけです。笑


美夜は私がこれまでに書いた小説に登場する主要キャラで二人目の最高学歴のキャラ。もうひとりは美夜と同じ大学出身だった真紀ちゃんの旦那の矢野くんねっ!


 読者さんが誰に共感して、誰を気に入ってくださるか想像がつかなくてドキドキします。

九条くんは好かれそうですね。主人公二人が書きにくい人達だから九条くん書くの楽チンで助かります~🍀


 前作の早河シリーズと世界が地続きなので早河シリーズのキャラクターが引き続きこっちのシリーズにも登場しています。


キーアイテムの小説の著者として登場した間宮誠治も早河シリーズ側の読者さんにはお馴染みですね。故人のくせしてあのおっさんはよく名前が出てくるなぁ。


ただ前作主人公の早河とヒロインのなぎさの登場予定はありません。

早河となぎさだけはミドエンシリーズに出さないと決めています。あっちの主人公とヒロインを出してしまうとミドエンシリーズが早河シリーズに乗っ取られてしまうからね💦


 早河シリーズから引き続きの登場は美夜の上司ポジションで小山真紀と上野恭一郎、杉浦誠の三人と、夏木会長第二秘書の日浦一真。


上野さんはとうとう捜査一課で一番偉い人に出世しました。上野さんが上司だとホワイトで働きやすそう。笑

真紀ちゃんも自分の班を持つ立場になりましたね。


日浦は初登場した早河シリーズのスピンオフ作品【Guilty secretギルティ シークレット】~早河シリーズ短編集収録の【Bay of Love】から、シリーズ完結編【魔術師】まで一度も下の名前が作中にも登場人物欄にも出ていません。


日浦の下の名前はミドエンシリーズに出すと決めた時に初めて考えたんです。

彼の名前は何がいいかな~キャラの性格的に〈一真〉っぽい。よしっ!一真でいこう!と名付けはいつもそんな感じでノリと勢いで決まりますヽ(´ー`)ノ


 ミドエンシリーズの作中時間(2018年4月スタート)は早河シリーズ完結編【魔術師】(2018年1月~)の後です。


ミドエンの伏線は【魔術師】収録のスピンオフ【episode1.人魚姫 the last scene】と【episode2.父親奮闘記】にミドエンシリーズを匂わせる要素がこっそり隠れています。


何気に愁の名前も、美夜と愁が相席したイタリア料理店ムゲットの名前も本文に出てます。早河シリーズ読了の方は散りばめられたミドエンシリーズの伏線を確認してみるのも楽しいかもしれません。


 シリーズはepisode0【片翼】を入れて全六作(予定)、シリーズを通して起承転結になるひとつの物語になる構成です。

起承転結の起の部分がep0【片翼】とep1【春雷】です。

次回の物語は承の部分。


 雨の夜に出逢った美夜と愁。

残酷で美麗な赤と黒の次なる事件は陰鬱な雨の街に舞う、蛍火の物語へ。

【episode2.蛍狩ほたるがり】はこちらからどうぞ♡

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893398496


        *


※キーアイテムに登場した梶井基次郎の『檸檬』と『櫻の木の下には』ですが話に興味はあるけど書籍購入までは……という方は、どちらの話も青空文庫さんの公式サイトで無料で読めますよ🍋🌸



       ーENDー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

~Midnight Eden~ episode1.【春雷】 結恵(yue) @mozukuchan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画