治る病、しかし、常に例外は存在する

『吸血鬼』という題材を、面白い観点から捉えた作品だと思います。
バトルやサスペンス路線かと思いきや、『治療』ときました。
そして、怒涛の展開。目まぐるしくも、置いてけぼりにしない。
読者を飽きさせない作風となっています。

また、設定や作中に登場する小道具の解説、場面の移り変わりが丁寧に描写されており、楽しく読書ができました。くどすぎず、薄すぎずと良い塩梅です。

特に、場面転換の仕方と言葉選びが秀逸だと思いました。
場面の変え方が自然で、違和感がありません。台詞や地の文に関しても作品の雰囲気を邪魔することなく、キャッチ―で読みやすい印象でした。
創作する側としても、勉強になることばかりです。

短編ということもあり、個人的には少し物足りなさを感じましたが、それほどこの作品がポテンシャルを秘めている、ということなのでしょう。作者様の筆力に反して、過小評価されている作品だと思います。これは、読まないと損ですね。

長編としても、楽しんでみたい一作でした。