第3章 M探偵ジン子の愛の物語

ジン子と慰めの愛犬ペロッ

 M探偵こと、奥葉ジン子のマンションは、郊外の住宅地にひっそりと建っていた。


 その日、ジン子はペットショップで冴渡に買ってもらった愛犬ペロッとバター犬遊びをしていた。


 最近は、ネット通販で大人のおもちゃを買うのが日課になっていたジン子だったが、それにも飽き足らず、愛犬を性欲の道具にして楽しんでいた。


 


「あん。来てる……ダメ……事件の匂いがする……やだ」




 愛犬のペロッは、M字に開脚したジン子の股の間で必死に何かを舐めている。


 クローズアップすると、開脚した股間のふもとにペロッ用の水が置いてあって、ペロッが水を舐めているその雫が、ジン子の貝状のそこかしこに飛んで接触している。


 


「あん。あん……」


 


 まったく、このメス犬はとんでもない遊びを考えるものだ。




 その時、部屋のチャイムが鳴った。


「宅配です」


 頼んでいたバイブが来たようだ。


 ジン子は、立ち上がりノーパンのままスカートだけを戻し、玄関に出た。


 宅配業者は、いつもの男の人とは違い、おどおどしている様子だった。


「ありがとうございます」


「……どうも」


 荷物を受け取るジン子は、ふと、妙な気配を感じた。


 宅配業者の顔を見ると、妙に目つきがいやらしく、ジロジロとジン子の体を見ている。


「あの」


「あ、すいません」


宅配業者は我に返ったように、ハッとして逃げるように走り去った。




「何……あの人……」




 ジン子は、再びペロッと遊ぼうかと考えたが、そういう気にもなれない。きっと、宅配業者のせいだった。


「わたし、へんな匂いでもしたかしら……」


 と、ジン子の脳裏に不穏な気配が漂う。


  


 部屋の壁に異様な雰囲気……。真っ白い壁にうごめく黒い物体が見えた。


 何ということだろうか。チャバネゴキブリだ。よくご家庭で見る真っ黒いゴキブリより小ぶりで、少し茶色がかっている。


 チャバネゴキブリが、部屋の壁を這っているではないか!


 これから冬に向かおうという時期に?


 なぜ?


 ゴキブリは、温度が下がるにつれ活動が鈍くなると言われている。実際、冬にそんなもの見たこともなかった。


 


 ジン子はその黒い異世界の生物に身動きを取れずに、ただ動きを目で追っていた。ゴキブリは、すぐに本棚の裏に姿を消した。


 


……と、思ったら、再び本棚を通り過ぎて出て来た。


 今度は、二匹だ!


 


 冴渡さんに電話……そう思ってスマホを持ったジン子であったが、ふと先日の別れ際の冴渡が心に浮かんだ。


 


「あの……冴渡さん……次はいつ来るの?」


「はぁ? Mのお前が俺に指示するつもりか? 百万年はえーよ」


 


 あの時の冴渡は素敵だった。


 冴渡いわく、奥さんに携帯を見られ、消し忘れていたジン子の恥ずかしい画像をチェックされてしまったというのだ。なんとかネットで拾った画像だとごまかしたそうだが、監視がきつくなりしばらく家には行けない。という事だった。


 


 言うまでもなく冴渡がこの部屋に来ない事で、ジン子の羞恥心は渇望していた。 


「どうしよ……どうしたらいいの……冴渡さん……」


 


 やはり、女性一人でゴキブリ2匹は荷が重い。


 先ほどまでコリコリに硬直した乳首は普段の装いに一変し、愛犬のペロッが水を飲む音だけがむなしく室内に響いていた。


 


 その時、ジン子のスマホが受信を知らせる音を鳴らした。


 冴渡からのlineだった。


 


 その画面。


「服を脱げ」


 だった。


 


 心躍るジン子であった。


M探偵「ゴキブリが出たんです!2匹も!どうしたらいいんですか!?」


 ジン子は、すぐに返信した。


 すぐに返信がある。


冴渡「こんな季節に?ゴキブリを持って来たんじゃないか?!」




「え? まさか!」


 ジン子は、玄関を振り返る。


 廊下に積まれた通販で買った大人のおもちゃの段ボールが山積みになっている。その角のほうからもう一匹、黒い物体が……。




「キャぁぁぁぁ!」


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