上司もSじゃなきゃイヤなんですぅ!
早朝のサーカス小屋に犯行予告のカードが届いた。
「いつもお世話になってます。山川です。
先日は、お忙しいところ無理を聞いてくださり、ありがとうございました。
また、ゴルフ、誘ってください。
怪盗山川より」
警察に一報が入り、警視庁の敏腕刑事
「何が犯行予告なんだ?」と、昆布巻がいぶかしげに冴渡に言う。
「さぁ……そんな事よりM探偵に事件解決を手伝って貰いましょう」
捜査のその字もせずに、M探偵を頼るナイスミドルな冴渡だったが、すでにM探偵は事件のにおいをかぎつけて、自分で首輪をつけて四つん這いで犬の格好をしていた。
「何! もうそんな格好で事件を説く気なのか!」
「さ、冴渡刑事……恥ずかしい……」
冴渡は、首輪の紐を引っ張り、ジン子の顔を昆布巻に見せる。
「さすがM探偵……部長、彼女がM探偵こと奥葉ジン子です」
昆布巻は、ジン子を鋭い眼光で睨みつけ、彼女の全身を視線で犯し始めた。
「ほお。君が噂の……。これは相当なMだな……腕が鳴る」
「ぶ、部長さん……イヤ……見ないで……」
ジン子が恥ずかしがると事件解決は近い。
「見える……事件の全容が……」
「何が見えるんだ! M探偵! 今すぐ言え!」
昆布巻が、焦ってジン子の体を揺する。
「昆布巻部長、落ち着いて。触るなら、叩いてやって下さい! もっとジン子を責めるんです。そうしないと……」
冴渡が言うと、ジン子が急に笑って吹き出した。
「M探偵! どうした?」
「昆布巻って……」
「え?」
「わ、わたしの名前だが……」
「やだぁ……面白すぎ、その名前。感じなくなっちゃった……」
「部長! なんて名前引っさげて登場するんですか!」
昆布巻、名前を笑われた事がショックで動揺を隠せない。
「しかし……いまさら……」
「ジン子、やめろ! 昆布巻部長の名前で笑うな!」
「昆布巻部長、すいませんでした!」
「昆布巻部長、こちらで昆布茶でも」
「あ、すいません! 昆布巻部長と、何度も何度も」
もはや言いたいだけの冴渡刑事だった。
犯行予告が、何の犯行予告なのかよく分からないので、捜査陣は一応退散することになったが、次の日、サーカス小屋が爆破された。
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