棒比べ その4(史上最低のおとり捜査)

 冴渡刑事が、M探偵こと奥葉ジン子の前から姿を消して数時間後、ジン子は警視庁捜査一課まで来ていた。


 ジン子は一刻も早く冴渡を探し出さないと、命に係わる危険があると察知していたのだ。


 ジン子の対応を任された刑事は、第6話(暴走!マジックミラー号)で死んだと思われた明智刑事だった。明智は、全身に包帯を巻き、車椅子で現れた。


「早く冴渡刑事を探してください!」


「どうして冴渡刑事とあなたが、一緒に行動していたのですか? まず、そこからです」


「だから、それは……」


 ジン子とて、冴渡が二人の愛の巣を探していたとは言いにくい。


「事件性がないからダメです。証拠を持ってきてください」


 行こうとする明智。


「待ってください!」


 ジン子が携帯を取り出す。


「携帯だって全く繋がらないんです! 信じて! 刑事さん!」


「あのね……」


 あきれる明智刑事。


「冴渡刑事は、非番の日は携帯を切っちゃうんです。それでこっちも困ってるんですよ! あのうすらトンカチには!」


「う、うすら……敏腕刑事だって……言ってました」


「ふん。自分では何とでも言える。それじゃ。忙しいんで」


 行こうとする明智。


「証拠ならあるわ……」


 止まる明智。


「なに……?」


 


「この乳首よ……」


 


 ジン子が恥ずかしそうにシャツを上にあげ、ブラジャーのカップを上に上げると、見事に硬直した少し長い乳首が上向きに立っている。


 その恍惚な表情と乳首に見とれる明智刑事。


「な、なにを……」


 


 反論しようとしたした明智の目に、さらに不思議な光景が始まる。


 ジン子の乳首の先から光が放たれると、その光が捜査一課の廊下に当たり、映像として投影されていく。


 


「なんだと……」


 


 捜査一課の廊下には、道を歩く冴渡が突然、マンホールの中に落ちる映像が映し出される。


「これは……」


 唖然とする明智刑事。


 


「乳首プロジェクターよ」


 ウィーンという機械音が、乳輪付近から聞こえる。


 


「どうしてこんな事が可能なんだ!?」


「……」


 ジン子は言いよどんでいた。冴渡にしか教えていない事だから。しかし、今回は急を要する。冴渡の危機なのだ。


「それは……あなたがやらしい目でわたしの乳首を見るから……」


「い、いや……」


 動揺を隠せない明智だったが、これで、冴渡がいかに彼女を信頼してるのかが分かった気がした。


「これが……M探偵か……。わかった。直ちに捜査一課出動だ! 全署員を動員しても冴渡刑事を探すぞ!」


 


 全身包帯で車椅子の明智が吠えた所で、誰も聞いていなかった。


 


「わたしにいい手があります」


 ジン子は、明智に耳打ちしている。


「おとり捜査だと!?」


「はい。冴渡さんはマンホールに落ちたみたいです。だから……」


 


 


 


「だから……」


 


 


 


「だから……」


 


 


 


_b_「わたしのマンホールにも落ちて下さいっ!」_b_


 


 


 


 冴渡が落ちたマンホールの近くで、パンティを脱ぎ捨てM字開脚をするジン子。


 その眩いばかりの一点を、曇りなき眼で見つめる明智刑事がいた。


 


 数分後、別の捜査員たちがマンホールに突入していくが、ジン子は明智に見つめられ、恥ずかしさでスーパーサイヤジン子になっていた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る