棒比べ その5(ダークナイトとマゾヒスト)

全裸にされた冴渡が、両手を縛られ両足を開いた状態で吊るされている。もはや、意識は無い様子で目を閉じ、空中で揺れていた。


それを見守る黒人21センチと、その周りにいる男女の観客たち。




「待ってて! 冴渡さん! 今助けに行くから!!」


突然、ジン子の声が響いた。




「何?」


黒人21センチが動揺する。




すぐに数名の警察官が転がり落ちてくる。


「皆殺しだ!」


黒人21センチが、叫ぶとこん棒を持った者が警察官に襲い掛かる。


警察官はすぐに応戦する。大乱闘になっている中、黒人21せんちは老人のマスクをかぶり、逃げようとする。




「どこに行くの?」


金色の陰毛を逆立てたスーパーサイヤジン子が立ちふさがる。


「またお前か……性懲りもなく」


「冴渡さんはどこ?」


「ハハハハ! もう死んでるよ」


黒人21センチが、顎で指した先に、全裸で吊るされる冴渡を見るジン子。




「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」




ジン子の目の中には、冴渡の短小包茎しか映っていなかったので、恐らくこの「いやぁぁぁぁ」は、その「いやぁぁぁぁ」だと思われる。


そう、ジン子が冴渡のアソコを見るのは、これが初めてだった。






爽やかにジン子の乳首をつまむ冴渡……


真面目にジン子の尻を平手打ちする冴渡……


四つん這のジン子の首に首輪をはめる冴渡……




そして、あれほどわたしを燃えさせた男のアソコが……




ジン子の脳裏には、冴渡との羞恥シーンが鮮やかに蘇っていた。ジン子の心の中には、いつも冴渡がいた。


そう言えば、冴渡とは最後まで行ったことなど無かった。本当は最後まで行ってもいいと、ジン子は考えていたのかも知れない。


そうなのか……?


しかし、捜査官と探偵なんか、結ばれてはいけない関係だと思っていた。


だからこそ、捜査の一環としての羞恥プレイとジン子は理解していたが、本当はそうじゃなかった。


冴渡からの羞恥が心地よかった。


冴渡からの苛めは苛め以上だった。


それらが全てジン子の心に焼き付いている。


ジン子は、気付いた。




冴渡のアソコが愛おしいと。




それがもう……ずっと無いのはいやだ。永遠に失われるのはいやだ。




「うう……」


冴渡が少し動いた。




ジン子が冴渡に駆け寄る。


「冴渡さん!」


「……M探偵か……俺を見るな……」


「……見ます」


「見るな」


「見ちゃダメなんですか?」


ジン子は冴渡が無事で嬉しかった。


「俺は……本当は小さな男だ……」


「小さくなんかないです」


「自分の事は自分が一番知ってるんだ」




確かに小さいかも知れないが、ジン子はそれを見て冴渡が本当に自分に必要だと悟った。冴渡は一体自分のことをどう思っているのだろうか。やっぱり、捜査のために一緒にいるだけの関係だと思っているのだろうか?


冴渡には奥さんも子供もいる。だけど、ジン子との部屋も用意してくれた。


たとえ、冴渡がジン子のことをどう思っていても、それは関係無いことかも知れない。ジン子は、冴渡のそばにいられるだけ居たらいいのだ。






「あいつを捕まえろ……」


ジン子は微笑んで、


「はい」




この関係を続けるのだ。捜査のために愛する男から羞恥され続けるのだ。それが、M探偵。奥葉ジン子の生き方なのだ。


よだれを垂らした犬のように、冴渡に命令され喜んで全裸のまま走り出したジン子。世にはびこる悪を捕まえるために。






しかし、黒人21センチは、ジン子が冴渡とやりとりしている間に優雅に歩いて逃げていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る