呪文
佐野心眼
呪文
あるところにマリーという女の子が生まれました。
天使のように可愛らしい子でした。
でも、お父さんは厳しい人でした。
食事をとらないと、お菓子を全部取り上げられました。
マリーはお父さんが嫌いになりました。
お母さんはあとでこっそりお菓子をくれました。
マリーはお母さんが大好きでした。
小学校に入る頃には、ほとんどの歯は虫歯で真っ黒でした。
口からはドブのような臭いがしました。
マリーはクラスメイトからいじめられました。
12歳のある日、マリーは図書館へ行きました。
棚には黒魔術の本がありました。
ページをめくると呪いの呪文が書いてありました。
マリーは呪文を唱えました。
図書館の帰り道、大通りに救急車が止まっていました。
中へ運ばれているのは、いじめっ子のトムでした。
それ以降、トムの姿を見ることはありませんでした。
ある日学校へ行くと、いつの間にかノートに『死ね』と書かれてありました。
アンナはマリーを見ながら笑いをこらえていました。
マリーは呪文を唱えました。
その日の体育の授業のとき、アンナは鉄棒から落ちました。
それ以来、アンナはベッドから出られなくなりました。
ある日お父さんに激しく怒られました。
マリーは呪文を唱えました。
その夜、お父さんはお風呂場で倒れていました。
お父さんはもう動きませんでした。
その後、お母さんは段々とやつれて衰えました。
やがてお母さんも動かなくなりました。
マリーは施設に預けられました。
そこでお母さんの形見の指輪が盗まれました。
マリーは呪文を唱えました。
何日かして施設は火事で焼け落ちました。
途方に暮れていると、慈善団体の者という紳士が近付いて来ました。
親身になってマリーの話を聞いてくれました。
マリーは紳士の家に招かれました。
地下室へ通されると、手術台のようなベッドがありました。
ベッドは血だらけでした。
マリーは助けを求めて叫びました。
男はマリーの首を締めました。
もう、マリーは呪文を唱えることができませんでした。
呪文 佐野心眼 @shingan-sano
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