自らの全てを奪った者への復讐を誓う剣士・スクートの戦いの物語。
この物語は非常にハードかつダークトーンで進んでいきます。序盤の平和な日常描写から、まさに急転直下といった具合で絶望に突き落とされる感覚は必読です!
しかし、このダークさこそが、この作品の最大の魅力でしょう。重く暗く、しかしそれがよいのです。
さらに、それを支える作者さんの文章力にも、目を見張るものがあります! ひとつひとつのシーンが目に浮かぶようで、物語に圧倒的なリアリティを与えています。
スクートの復讐譚は一体、どんな結末を迎えるのか……
是非、その目でお確かめください!
穏やかな日常、愛する者との日常を大切に想っている事が伝わる一話。
不穏な文章で区切りがされて、物語は外界と隔絶した隠れ里の日常へと場面が切り変わっていく。
過去の絶望を脳裏にちらつきながらも、今ある幸せを守り抜こうとする男の心境が、これから訪れる絶望の深さを知らしめるようだった。
作り込まれた世界観。どこかほのぼのとした日常を描く物語は異なる、どこまでも現実に即したダークファンタジー。
一人一人のキャラクターの全てに命が吹き込まれていて、作者が深い愛情を注いでいる事がよく分かる個性。
センスある言葉選びと、状況に合わせて場面を切り替える文章力の上手さは、まるでドラマか劇場を見ているような心境にさせる。
愛する者の死をきっかけに、とうとう男は理解した。己から全てを奪い去った【神】とやらは、どこまで行っても自分の敵なのだと。
良かろう、ならば憎悪と激情に身を焦がすまで。
この身体に入れられた呪われた血と共に、貴様らの全てを燃やし尽くそうと。
愛剣たる十字剣(クレイモア)を天に掲げる男の姿は、まさしく復讐の剣士。
【神】に、宗教に人生を狂わされ、運命までも翻弄された男の復讐の物語。
とても硬派なダークファンタジー作品でした。所々に伏線が散りばめられていて、敵である正教会や魔女の謎。
主人公であるスクートの身に宿る【黒血】と同様の血を持つドラゴン。
ワクワクすると同時にゾクゾクします。
これから、彼がどんな復讐の物語を歩むのか。
書籍化も狙えるだろう完成度です。誤字脱字が無いのも好感が持てます。
ベルセルクに似た重めのストーリーが展開されていますが、そういったリアルさを求める読者の方に、この作品はおすすめですね。
★★★は固いです。