二度の喪失と絶望を贄に、男は復讐の逆十時を天に掲げる

穏やかな日常、愛する者との日常を大切に想っている事が伝わる一話。

不穏な文章で区切りがされて、物語は外界と隔絶した隠れ里の日常へと場面が切り変わっていく。

過去の絶望を脳裏にちらつきながらも、今ある幸せを守り抜こうとする男の心境が、これから訪れる絶望の深さを知らしめるようだった。

作り込まれた世界観。どこかほのぼのとした日常を描く物語は異なる、どこまでも現実に即したダークファンタジー。

一人一人のキャラクターの全てに命が吹き込まれていて、作者が深い愛情を注いでいる事がよく分かる個性。

センスある言葉選びと、状況に合わせて場面を切り替える文章力の上手さは、まるでドラマか劇場を見ているような心境にさせる。


愛する者の死をきっかけに、とうとう男は理解した。己から全てを奪い去った【神】とやらは、どこまで行っても自分の敵なのだと。
良かろう、ならば憎悪と激情に身を焦がすまで。

この身体に入れられた呪われた血と共に、貴様らの全てを燃やし尽くそうと。

愛剣たる十字剣(クレイモア)を天に掲げる男の姿は、まさしく復讐の剣士。

【神】に、宗教に人生を狂わされ、運命までも翻弄された男の復讐の物語。


とても硬派なダークファンタジー作品でした。所々に伏線が散りばめられていて、敵である正教会や魔女の謎。
主人公であるスクートの身に宿る【黒血】と同様の血を持つドラゴン。
ワクワクすると同時にゾクゾクします。

これから、彼がどんな復讐の物語を歩むのか。

書籍化も狙えるだろう完成度です。誤字脱字が無いのも好感が持てます。

ベルセルクに似た重めのストーリーが展開されていますが、そういったリアルさを求める読者の方に、この作品はおすすめですね。

★★★は固いです。

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