最終話 高男子力男子と名前呼び
さて、
もう僕は正直次々と繰り出される細川君の男子力にやられっぱなしである。
駄目だ、こんなことでは。
僕だって男なんだから、ここまでは出来ずとも、せめて何か男子力の欠片でも拾って帰りたい!
「細川君! いや、細川先輩!」
だから僕は、女子力をたぎらせまくった女子からおにぎり攻撃を受けている細川君に向かって叫んだ。
彼はまだまだ食べられるのか、もしかしてそれは残り物処理とかそういうことなのでは、という量のおにぎりを口の中にぐいぐいと押し込まれながらも「何だ」と返してくれる。
さすがは男子力の
「僕を弟子にしてくださいっ!」
万年係長が駄目係長ぶりをここでも如何なく発揮しまくって未だに何も釣れていないこの河原で、僕は、その場に膝をついて懇願した。女性社員達が「林君、ウケるんだけど」と笑っている。
だけど僕が本気でやっているのがわかると、「何なのマジで」とか言いながら、一人、また一人とその場を去って行った。残されたのはおにぎりを咥えた細川君と、僕。そしておにぎりがまだ3つほど入ったタッパーだ。
細川君はしばらくもぐもぐしながら僕のことを見下ろしていたけれど、それをごくんと飲み込むと、す、と腰を落とした。
「立て、林」
「えっ、あ、はい」
ぶっきらぼうにそう言って、無理やり僕を立ち上がらせると、彼は全く表情も変えずにこう言ったのだ。
「俺は弟子を取らない主義だ」と。
まぁそりゃそうだよね。
普通そうだよ。何せ男子力だからね。
「だが」
「?」
「友人としてなら話くらいは聞いてやる」
「!!」
聞きました!?
この神対応!!
この懐の広さ(面積とかじゃなくて)が彼を高男子力男子たらしめている所以なんですよ!
もういっそ抱いてくれ、細川君!
もしかして僕実は女の子だったんじゃないのかなって思うよ。いやもう良いよ、いっそ女の子でも!
「あとは自由解散らしい。帰るぞ林――いや、龍馬」
ここへ来て名前呼び!
これはもうまごう方なき『友人の証』!
名前負けしてるってよく言われるから、下の名前はちょっと恥ずかしいんだけど、細川君にそう呼ばれると何だか背筋がピンとしてくるから不思議だ。
「うん、帰ろう、細川君!」
ついていきます、細川君。
いつか僕がダンゴムシくらいになれるその日まで。
高男子力男子のすゝめ 宇部 松清 @NiKaNa_DaDa
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