第12話 高男子力男子と後片付け

 さて、宴もたけなわとなりましたが、そろそろ肉もなくなりましたので、BBQの方は終了となります。


 せめて後片付けは手伝わないとなぁ、と思っていると、今度は『かしまし娘達』が動いた!


「こういうのはの仕事だからぁ」


 白井さんがちょっとねっとりした目で細川ささめかわ君を見つめて言った。彼は、そんな粘度の高い視線にも全く動じす、「ウス」と返したのみである。一応彼女は先輩なのでさすがに「おう」ではなかった。「ウス」は敬語、「ウス」は敬語だよね、細川君!!


 見ると彼女らは鞄からサッとエプロンを取り出して装着し、どうやら持参していたらしい食器洗い洗剤とスポンジを持って焼き網や鉄板を洗い場へと運んでいく。


 それを見るともなしに見つめている細川君はというと、シートの上に胡坐をかいて、やっぱりサラミをかじっていた。そんなに肉を欲しているの、細川君?! 僕は君の食生活がちょっと心配だよ。


 せっかくだし隣に座ってもっと間近で観察しよう、と思ったその時だ。


「きゃあああああ!」


 白井さんである。


 何なんだ、あの人は。

 

 そしてもちろん、そこでこの男が黙っているはずがない。


「白井君、大丈夫かい? 君が心配だ」


 白井君大丈夫かいロボこと須磨先輩である。

 颯爽と駆け付けた須磨先輩に対してちょっと嫌な顔をしつつも、白井さんは油と焦げでギトギトの鉄板を指差した。


「全然汚れが落ちなくて~。これ新しいエプロンなのに、汚れちゃったんですけど!」


 いや、エプロンってそういうもんじゃないのかな?


 って男性社員は軒並みそう思って顔を見合わせたけど、何も言うまい。

 彼女達にとって、その何かよくわからないブランドのエプロンってやつもファッションの一部なのだから。


「そうか。それじゃ、僕が代わろう。君達は休んでいたまえ」


 なかなか男前な台詞を吐いて、須磨先輩は洗い場に立ったが――、


「俺が」


 明らかに駄目そうな須磨先輩を押しのけて、男子力の百人組手、細川君がそこに現れた。



 

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