いつか島津に大河が来る日まで

関東の住人にとって、九州、それも宮崎は遠い。
実測では北海道までとあまり変わらないはずだが、ずっと遠い距離を感じるのは、個人的な土地勘の有無と、
何より目ぼしい都市は片手で数えるほどしかない東北方面と違い(北の住人に謝れッ)
その道のりの上に、現在の首都よりも遥かに旧く魅力的な歴史を蓄えた街が数珠つなぎになっているからだろう。
物語の舞台となる都城(みやこのじょう)、架空の宮之城(みやのしろ)も、そのエモい名の響きどおりの情緒溢れる街。古くは薩摩藩の一部だった。
薩摩藩といったら薩摩隼人の蛮勇の印象が強いが、関ヶ原合戦時代の領主島津義弘の時代から福祉国家の側面があり、幕末の時代にも隊士の自己満的割腹自殺を禁じるなど、イメージよりも遥かに温情的で理知的な側面もあった。
そんな愛すべき郷土も例外なく襲う少子高齢過疎化の波に、これじゃイカンと立ち上がった暑苦しい愛郷の士、祭り之介と、薩摩島津に特にゆかりはないが、祭り之介の熱に巻き込まれたフウイ、コモロウのチャットでの会話を一つの軸に物語はゆっくり進んでゆく。
単に歴史やご当地ネタを並べるだけでは、部外者はすぐに飽きてしまうところだが、そうなっていないのが秀逸、引き込まれるストーリーです。

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