エピローグ

それから流れるように時は過ぎ、気づけば

私の出所日も近づいていた。

「923番出ろ!」

私の独房に看守の声が響いた。

親にも縁を切られ、行くあてもない私は、

出所後の不安しか頭になかった。

塀の外に出た時。

「恵!」そう呼ばれたような気がした。

「私の事迎えに来る人なんか居るはずない。

きっと、幻聴だよね、、、」

私はそう呟いた。

次の瞬間、

誰かが後ろから私を抱きしめてきた。

懐かしい匂いのする誰かが、そして

「恵、幻聴なんかじゃない。

俺がお前の事を迎えに来た。」

そう耳元で囁かれた。

「あき、、くん?安芸くんだよね?何でここにいるの?自分を殺そうとした女の子の所に。」

「恵、俺は恵がそんなことする奴だなんて思ってない

俺は恵が好きだ!叶巡璃なんかじゃなく加藤恵が

好きなんだよ!」

「安芸くん、いや倫也くん。私も、ずっと前から好きだったよ。」

私はそう言い溢れんばかりの涙を堪えながら

懐かしい彼の顔を見つめた。そして

「大好きだよ、倫也くん。」

「大好きだよ、恵。」

そう言いお互い目を閉じ唇を合わせ、

抱き合った。

2人が出会ったあの桜並木の下で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

冴えない彼女の育てかた SS Nostalgic cherry blossams @A01241857

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る