VR系の皮をかぶった青年と少女の本格ファンタジー

『SAO』以降、ファンタジーのスタンダードと化したVRゲーム系。ただ、そのゲーム的要素は『ドラクエ』や『FF』や『ラグナロク』を下地としている部分が多々あり、またゲーム的要素を記号として使うだけのものが多く、『SAO』のようにゲーム性にも考慮している作品や、『隣り合わせの灰と青春』のような「システムを描かない作品」に比べると、どうしても薄さを感じずにいられません(それを逆手にとった『この素晴らしい世界に祝福を』のような作品もありますが)。

その点、この『Vermillion ; 朱き強弓のエトランジェ』は、入口こそ「VRMMO」と語っていますが、モチーフは世界的に大ヒットした海外RPG『The Elder Scrolls IV: Oblivion』を思わせる重厚なものであり、かつ作中でも数値がどうのと語られることはほぼなく、「異邦に放り込まれた青年と少女の冒険譚」として他とは違った雰囲気を生み出すことに成功しています。

それでいながら文章も難解ではなく、さりとて軽薄すぎるわけでもない。

転生チートだのハーレムだのに飽きてきた人、かつて『ドラゴンランス戦記』を読み『ダークエルフ物語』を楽しんだ人、大人であろうとする青年と危うさを抱えた少女の旅路にニヤニヤしたい人におすすめの作品です。

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