ハーレムをヤンデレで調理した魅力が如実にわかる良作

みんな大好きハーレム展開。ただ、ヒロインが増えれば増えるほど最初に出たヒロインの影が薄くなるとか、物語中でも新ヒロインばかり目立ち既出のヒロインが没個性化していくとか……そういう作品、多いですよね?

『黒の棺の超越者』は、その問題への解決策として「ヤンデレ」をうまく活用している作品です。

あ、ヤンデレと聞いて引きました? 私も最初はそうでした。

しかし、どんな作品であろうとも「執着」はキャラを特徴づける大きな個性です。また、恋愛展開を描く場合、「執着」というキャラ特徴の根源要素を直接的に描いたとしても、今度はその根源を前提として、キャラがどのような行動を起こすかという新たな「読者の興味」を喚起できます。『黒の棺の超越者』は、そのあたりをうまく活用している点が大きな特徴です。

さらにヒロインたちの「執着」がトラウマ等と結びついていることを示唆しつつ、主人公にも大きなトラウマがあることを最初に提示しているところや、メインヒロイン(?)の内面を意図的に(ですよね?)深く描かないところが実にうまい。

そのうえ、少年漫画的ギミック「オーバード」の設定そのものが面白い。映像的に栄える点はもちろんのこと、読者にオリジナル能力を妄想させやすいこのギミックは、作品を流行らせる原動力のひとつである二次創作(特に薄い本とかw)を加速させやすい魅力をもっています。

難点は、某パワードスーツハーレム物が陥った「常に新ヒロインを供給する展開」になりがちであるところ。

このあたりをうまく料理しつつ、恋愛関係は抜き(恋愛はメインではないので結ばれる相手はうやむやのままでも問題ない)にして本筋をピシッと終らせれば、かなり面白い作品に仕上がるのではないかと期待しています。