おまけの彼女

 私は自宅……ではなく、彼の家を愛している。清潔でなんだかいい香りがし、綺麗で居心地が良い。何より彼が住んでいる。

 彼とのおしゃべりはどんな娯楽よりも楽しい。大学のサークル渡りも楽しいが、これには流石に負けてしまう。


 彼は眠っていた。私がお酒を飲ませたからだ。寝顔が無垢でなんだか可愛らしかった。


「寝てるかな?」


 彼は目覚めない。


「寝てるよね」


 寝顔を見ると魔がさすものだ。全人類共通のサガだろう。


「ちょいっと……つまみ食い」


 私は彼の顔にぐいと詰め寄り、唇を近付けた。お酒の力があればこんなことお茶の子さいさいなのだが、あいにく酔いは覚めていた。しかし、魔がさしたから仕方ないのだ。彼も許してくれる。というかたぶんバレないだろう。だって寝てるし。


「……うん?」

「うわあっ!?」


 目覚めた。


「大声出すなんて珍しいな」

「そ〜うかな?」

「めっちゃ汗かいてるけど大丈夫か」

「大丈夫大丈夫……」


 いけない、少し恥ずかしい。いつもは逆の立場だというのに。小心者の私にとって、お酒の力は最早甘えるためには欠かせない要素だった。


「……」

「どした?」


 また今度、眠ったときには頑張ろう。

 眠っていないときも、お酒を飲んでいなくても、できれば頑張っていきたい。

 そうして、「なんでもないっ」と笑った。

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男女が部屋でだらだらするだけの話 東 京介 @Azuma_Keisuke

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