第32話ーあれから

 桜が咲いている。今日は入学式。私たちは進路が別れて別々の道を歩んでいるけど、バンドは続けている。高校の卒業式に、雅人くんが、

「俺は辞める気ないぞ。お前たち面白いからな」

そう言ってくれて、みんな尻込みしていた気持ちが元通りになった。

はじめのキッカケは、私が『青春』をしたいと思ったから。そんな私の気持ちを、捉え方によっては明日香と悟くんが利用したから。気づいてる?明日香さんじゃなくて、もう明日香なの。

「桜キレイだから、記念に写真とらない?」

「優子好きだよな、そういうの。まあとってやってもいいぜ」

口調は相変わらずだけど、明日香も私を名前で呼んでくれてる。私が要領よく勉強するコツをつかんで、同じ進路に進んだ。私と明日香は、親友。たまに言い争いするけど、私がいじけるとすぐ明日香が謝ってくる。面白くて繰り返したらさすがに怒られたけど。

ヴー

「悟くんから返事きたよ」

悟くんは別の県で勉強をがんばってる。隣の県だから練習にはちゃんと来てくれるって約束した。しばらくは路上ライブ難しいけど。

プロを目指したいという気持ちは変わっていない。でもお互いの人生に対する夢も諦めたくはない。高校生の時みたいに毎日は演奏できないけど、こんな日々もいいかも。

私たちはレコーディングを始めた。今まで行った路上ライブでは、買ってくれる人もいる。

大学に行かないことも考えた。でも人生のモラトリアムを楽しむことを考えて、行こうかな、と思った。親も賛成してくれたし。たくさんのことを吸収したい、そう思って、勉強をがんばり明日香と同じところに入れた。

プロになる、夢はあきらめない。

まだまだ長い人生がある中で、私たちは音楽を楽しみ続ける-。

「明日香、大好きだよ」

「俺も優子のこと、多分好きだぜ」

「多分ってなによ」

探してた青春は、ここにあった。

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私のバンドと仲間たち 笠原美雨 @_shirousai

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