第3話 未来に託して
死んだ腎臓 二・五
第二・五章 未来に託して
それから色々な事があった、移植し、公務員となり、鬱になり、退職し、自殺未遂をしたり、蕁麻疹に苦しんだり、オンラインゲームのチームマスターになったり、何とか生きてきた、今は何も出来ていない。ただの見た目は普通な、働かない障がい者だ。
障害者と書かずに、障碍者・障がい者と書きましょうと、あれからなったらしいが、気にする余裕は私にはなかった。配慮は大事だし素晴らしい事だ、でも私にとって、間違いなく腎臓が死んだ事は人生の逃れられない大きな障害だった。他人がどう呼ぼうが私は苦しいままだろう。
あの時、首を吊って死んでいた方が、この先の苦痛に比べたら楽だったのかもしれない。
片足をベッドに固定され三日監禁された地獄の様な集中治療室、それより辛かった蕁麻疹。泣きながら死のうと思いロープを積み西に走らせた車内。それらを思い出すと、そう思う事がある。
今後必ず、移植された腎臓は拒絶反応によりダメになる時が来るのだろう、詳しく調べたくもないが、その後は、きっと今までより辛い事が待っているのだろう。
私はそれらも、いつか小説として書いて行こうと思う。もちろん創作小説も。
人の目を見て話せなくなる程度の不幸の側にいつも、今も生きていれるだけの幸せが、確かにあったのだと、今は分かる気がする。
いつも変わらず優しく見守っていてくれた、母や家族。
普通では無くなってしまった私の側に居てくれた、恋人。
昔と変わらない態度で冗談を投げ付けてくる、友人。
こんな私にも、温かい気持ちにさせてくれた、物語や音楽。
辛すぎる現実を忘れさせてくれる、ゲームや、その中の顔も性別も知らない、友人達。
または、私を生かしているのは恨みや悔しさかもしれない。私は負けず嫌いなのだ。
それは、何の役にも立たない精神科医の、その場しのぎな身も無い天気の会話。
太った私に向けて、痩せさせるために、移植した腎臓が、あと五年も持たないと言った、医者。
移植しているなら障碍年金はもらえるか分かりませんねと、他人事に軽く言ったおじさん。
顔も事情も知らずに、ただの診断書等の文字だけの判断で、支給は出来ませんと、まるで、もっと辛い人も沢山いるんですよと、私に説教してくる様な、年金不支給の、ただの紙切れ。
ただの風邪が命取りになる免疫力低下の、私の前で理由を話しマスクを頼んでもしない、上司。
移植してくれた命の恩人である母に迷惑ばかりかけ、時には罵声を浴びせた事。
本当は働けるのに、だらだらと言い訳を続け現実から逃げ、一番何の役にも立たない自分自身。
そんな人達に私は負けたくない。今はそう思える。
勝ち負けでは無いだろうけども、私が自殺して、心無い彼等に同情されるのは許せない。
私は大学も出ていなければ、小説なんて書いた事は無い、読もう読もうと、ろくに本も読めてきていない。この稚拙な文章でさえ、必死に漢字を調べながらだ。それでも、毎日、練習として色々なジャンルの小説を投稿しようと思う。
あの時、私を勇気付けてくれた物語の様に、私も、もし誰かを勇気付けれたり、少しの暇つぶしになってもらえたら、万が一、私の物語のおかげで人生が良くなった、心が軽くなった。そんな私を変えてくれた、物語の様な事を表現出来たら、こんな私でも、生きていた意味があったと思える気がするのだ。
一旦あとがき
こんな稚拙な長い文章を読んで頂き、本当にありがとうございます。
第三章以降は、未来の小説家の力を付けた私に託します。
ただ、自己紹介と、これからの決意表明を短く書こうと思ったら、楽しくなって長編になってしまったので、死んだ腎臓の最後のオチは、小説家になった。という事にするために、私は毎日何かしらの文章を書こうと思います。
辛い雨は降り続けている、そのほんの一時の間だけでも、心が晴れる。
そんな気持ちになれる物語をいつか書ける様に、母の一文字を貰い、
辛い雨は、病気かもしれないし、仕事や失恋かもしれない、それは五分で終わるはずの宿題かもしれない。
誰にだって、いつも心に雲はあるものですよね。そして雨はもしかしたら止まないかもしれない。皆辛いし、他人の辛さは分かりませんから、最後は自分で辛さに向き合うしか無いのですよね。
何て綺麗事を言っておいて、汚い世界のホラーも好きなのでホラーも書きます、誰かの暇つぶしにでもなれば、私は幸せです。
私が死んでも、誰かの中で、物語は生き続ける。そんな願いを込めて、私は雨の中、歩き出そうと思います。
「首を吊ろうとした私よ、勝負しよう。いつか死ぬ時に、あの時、死んでいた方が良かったと思う最期なら。君の勝ちだ」
死んだ腎臓 雨間一晴 @AmemaHitoharu
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