静かに、人としての在り様を問いかける名作。

アンドロイドと人間は、こころを通い合わせることが出来るのか。

文中にこんなくだりがある。
ひとつめは、警官との会話。ふたつめは、とある男との会話。

「貴様、名前は」
「アリスと言います」
「誰がペットネーム(愛称)など聞いた。番号で答えろ」
「……ED209。汎用型ハウスキーパー・ガイノイドです」


「なあ、おまえ名前は?」
 男の問い掛けに、アリスはしばし逡巡して「ED209」と答えた。
「違う。そうじゃない。シリアルなんか聞いちゃいない。おまえの名前が知りたいんだ」
 男の言葉に驚いた彼女は、ただでさえ大きな瞳をまん丸にして。
「アリス」
「――アリスか。いい名前だ」


この対比と、献身的なアリスの優しさがこころにしみました。
機械だというのに。いや、人間に従順なようにプログラムされた機械だからか。
人のなかには、優しさもあれば残酷さもある。
彼女には、負のプログラムがない。
しかし、アリスはとても「人間らしく」見えます。

この話のラストに待っているのは、どんな結末なのか。
静かに、人としての在り様を問いかける名作です。