床屋のクルクルとナメラスジ






 これは今現在のお話・・・

私は北関東のとある田舎町に住んでおります。

前のお話に続き、田舎とは縁が深いようです。好きなので苦には思いませんが。


 さらにまぁイイ事がもう一つ。

この地域、霊的なスポットが多いのです。

自称、霊感が無い私は皆のお守り代わりになるかも、なんてヌルい考えを持ってました。



 だけど甘かった。

相応の状況に遭遇しております。霊感はない、はずなんですがね・・・。


一応言います 信じる信じないは貴方次第。



  ◆─┈┈


 これは去年の10月にあったお話。

実は引っ越してまだ1カ月程で、半袖でも問題ないことに驚いていた記憶がある。


 因みに、私は生き物が好きであり

手始めに "ゴキブリ" をナマで見れないか考えていた。つまり、実家はソレのいない地方。

 ・・・今回のお話とは関係ないけど。



 話を戻す、これは仕事帰りの時。

21時頃だったか疲れつつ自転車を漕いでた、ライトで歩道を見失わないように。


 先の通り田舎町で、外灯がまるでない。


 通る道は一面田んぼ。

抜ければ今度は大きな森、抜けるとさらにまた一面田んぼ。

 道は舗装されているけど真っ暗な森はおっかなく、育ち自体は都会の私にはかなりクる。家まで1kmほど、そんな道が凝縮されている。


 森と歩道の境には大きな堀がある。

ガードレールはなくこれが非常に危なっかしい。ある程度深く、堂々と粗大ゴミなど投棄されている始末。


 この場所、昼でも冷たい雰囲気。流石に長居したくない、霊感ないはずなのに。


 大体察したと思うけど、此処が問題の場所。



 右へ緩やかにカーブした道を行く。

 すると、何かが聞こえてきた。



  ──キュリ  キュリ

      キュリ  キュリ....



 金属が擦れるような音だ。

自分の自転車かと思ったが、漕ぐタイミングに合ってない。木々の騒めきでもない。



 " なんだろ、何か動いてるのかな "


 気になってしまい一度走りを止める。

聞き耳を立てると、前方左側・・・堀からそれは聞こえるようだ。捨てられた粗大ごみの方から。



 さっさと帰るべきだったと今も思う。


 下を覗き、驚いたことが二つ。

大きく長い"サインポール" が捨ててあった。

床屋とかにある白・青・赤のクルクル回っているアレ。

 当然光ってないが、目が慣れてソレだと何となくわかった。



  けど、私が驚いたのは

  ソレがあったから ではない。



  ──キュリ キュリ

      キュリ  キュリ....



 さっきの音の正体・・・何故かサインポールが動いていた、電気も通ってないのにキュリキュリと。

 これがまず一つ目。



 けど動いてる理由はすぐ分かった。

 二つ目暗闇の中──



『ァァー.. アァーァ... ァアーァ....』


  サインポールに、誰かいた。


 男の子だ、明らかに普通ではない。

声帯が潰れたような声を出し、サインポールを両手で回している。よく見ると・・・裸の姿だった。

ソレは背を向け、私に気づいていないらしい。


 明らかにヤバい者が見えていると思った。

これ、チャンネルが合ったって言うらしいが、気づかれる前に去らないとイケない


 バック・・・踵を返すことにした。

時計回りで静かに、なるべく足を静かに浮かせつつ自転車を押す。

だがくるりと回る途中、嫌なものが見えやがった。



 最初の向きから "4時の方向" 。

霊園があった、何故か紫色の立ち上がるような光まで見える。


  (──ヒッ! )

か細い悲鳴を出しそうだったが、何とか抑えた。


 ある程度離れたところで自転車に乗り、元来た道を戻る。漕ぐ際に振り返ると、堀から頭とおでこが見えた。見間違えではない、こっちを向いてた。

何とか目をそらしたが、完全に合うとどうなってたのだろう・・・。


 それから遠回りをし、家には無事ついた。

途中のラーメン屋さんに寄って落ち着こうとしたが、22時で閉店していた。


 家についても汗が止まらなかった。

ふとスマホを見て心を落ち着けようとし、勢い余り地図のアプリに指が触れた。


 その際に先ほどの場所が入ったのだが、


 さっきの "4時の方向" と

森の先 "11時の方向" にも霊園があったらしい。


 私は挟まれた場所でソレに遭遇したことになる。すぐに思った──



    "ナメラスジ" だ。


 ナメラスジとは主に香川や兵庫で伝わり、

"霊たちの通り道" 指す言葉。ロクな事があるはず無く、多分私はそこで遊んでた『あっち』の子供を見てしまったのだと思う。


 その子しか見えなかったからよかったけど、通り道ならば他に複数いてもおかしくなかった。


 子供の霊・・・と思い調べるとさらに分かったことがある。


 憶測の域を出ないけどこの場所──


 敢えて言わないでおくけど、見かけた子は恨みを募らせてる可能性がある。でも、私が出来るのはどうか安らかにと想うだけ。


 ただあの時は無事に帰宅は出来たのだが・・・

 今もある現象が起きている。



  ──キリ  キリ

      キリ   キリ....



 あのサインポールの音ではないが、

"カッターナイフ"を出すときの音が外のベランダから2週間ほどの感覚で聞こえてくるようになった。

何でかは分からない。アレからもう1年と1カ月経ち、身体に変調はないが今も聞こえてくる。


 もう一度言う、書いてる今も聞こえる。



 今これを書いてるのは12月の始め。

今月は13日が金曜日、きっとまた聞こえるのだろうか・・・。

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一口ホラー体験談 くろかーたー @kurokata

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