最終話 エピローグ

 同級生のみんなは、毎朝何時くらいに起きてるんだろう。よくは知らないけど、毎日外が暗うちに起きる子はそんなにいないと思う。少なくとも、私と同じ小学4年生では。

 だけど、わたし芹沢真昼にとってはこれが日常だ。なぜなら、忍者の修行があるから。それは、宿泊研修の一件があった後でも変わらない。


「真昼ー、起きたかー」

「いま行くー」


 いつものようにお父さんの呼ぶ声が聞こえる。お父さんからは、勝手に忍者の力を使ってはいけないと、今までより一層厳しく言われたけど、それはそれとして、修行自体は今まで通り続けることになった。

 って言っても、わたしが将来忍者になるかどうかはまだ分からないんだけどね。


 ふと、稲葉の事を思い出す。忍者の中にはあんな悪い奴もいるし、将来忍者になったら、またあんなのと戦わなきゃいけないかもしれない。


(それは、ちょっと怖いな)


 そんな事を考えながら、お父さんを探して茶の間の戸を開けるけど、中にいたのは全く想像もしていないものだった。


「おはよう、芹沢」

「お、沖くん⁉」


 そこにはなぜか、お父さんと沖くんがちゃぶ台をはさんで座っていた。しかも、二人とも忍者姿だ。なんで?


 驚くわたしに、お父さんが言う。


「実は、研修に迎えに行った時、沖くんのお父さんとも色々話をしてね。修行をつけてくれないかって頼まれたんだ。お父さんとしても、忍者の未来のため、有望な子を鍛えるのは望むところだからな。と言うわけで、今日から一緒に修行をすることになるけど、いいかい?」


 なんだかご機嫌なお父さん。どうやら沖くんのお父さんとは、忍者とそれに繋がる者同士、色々通じ合うものがあったみたい。

 それにしても、いいかも何も、沖くんはすでに忍者姿で、準備万端じゃない。


「もしかして、迷惑だったか?」


 言葉を失くしたわたしを見て、沖くんが不安そうに言う。だけど、そう言うわけじゃないから。


「ううん。ビックリしただけだよ。わたしも、一緒に修行に付き合ってくれるなら嬉しいよ」


 ハッキリ言ってお父さんは強すぎるから、どれだけ強くなってもまだ全然かなわない。だけどこうしてわたしと同じくらいの強さの沖君となら、もっと一緒に鍛えられるような気がした。


「よかった。イヤだって言われたら、どうしようかと思った」

「言うわけ無いじゃない。一緒にユキちゃんを助け出した仲だもん」


 そう言って笑うと、沖くんも笑い返してくれた。それを見て、少しだけドキドキしたのは、一緒に修行をする仲間が増えたのが嬉しかったからだろうか?


















「ねえ。沖くんは、忍者になるの怖いって思ったりしないの?この前の稲葉とか、すっごく危ないやつと戦わなくちゃいけないかもしれないんだよ?」


 修行を終えたところで、ふと思った事を沖くんに聞いてみる。少し前にも浮かんだ、稲葉に追いつめられた時の光景が頭をよぎる。忍者をやってると、いつかまたあんな目にあうかもしれない。そう思うと、体が震えてくる。


「そりゃ、もちろん怖いよ」

「じゃあ、なんで忍者になろうって思うの?」


 すると沖くんは、少し考えた後、ゆっくりと言う。


「前は、オレのせいで父さんがケガして、だからその分オレががんばらないとって思ってた。だけど、この前要がさらわれた時、そう言うの関係無しに、何とかしたいって思った。もし一人前の忍者になったら、もっと上手くできたんじゃないかって思った。それが、今オレが忍者を目指す理由だけど、変か?」

「ううん。そんなことないよ」


 実はわたしも、沖くんと全く同じことを思っていた。

 確かに、怖い思いをするのはイヤだ。だけどもしまたユキちゃんがさらわれるような事があったら、誰かが本当に困るような事があったら、わたしにできることなら何だってやりたかった。

 もちろん、お父さんたちには心配かけないようにしなきゃいけないけど。


「わたしも、もっと修行がんばろうかな。将来、忍者になるかはともかくね」


 お仕事として忍者をやりたいかって聞かれたら、それはまだ分からない。ユーチューバーにだって憧れたし、やりたい事なんてまだ全然決まってない。


 だけど、危ない目にあってる子を、悲しい思いをしている人を、少しでも助けることができるのなら、忍者になるのも悪くないかも。今は、前より少しだけそう思えた。




 最後まで読んでくださってありがとうございます!(^^)!

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小学生だけど忍者修行にはげんでます 無月兄 @tukuyomimutuki

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