🧨物理で胸の間にダイナマイトが挟まっている系主人公🧨

誰しも胸に一物を抱えていると思う。誰だって爆発したらヤバいやつを抱えている筈だ。どうも導火線が短い人ほど、人生とても・すごく損をしているみたいである。あるいは、すごく得をしている。羨ましい。でも僕としてはそういう風に得をしている人にはあんまり近寄りたくないなぁと思う。なんか怖そうだから。

主人公の絵描きの環ちゃんの胸の間には、ガチで物理的にダイナマイトが挟まっている。ささやかな谷間とも言えない間に、比喩でも何でもなく。その証拠に、あんまり環ちゃんが高まると襟首から煙まで出ちゃうんである。想像しただけで面白い。メチャかわいくないですか? そのダイナマイトが爆発すると、環ちゃんの命じゃなくて、地球がヤバいんだぜ!って事をひょんな事から知って物語がスタートする。

アルバイトをしているレコード店の店長はもちろん、お客さんとの交流があり、ご近所の商店のお好み焼き屋さんとの出会いがあり、環ちゃんは胸のダイナマイトを冷やしたり、発熱させたりしながらちょっとずつ成長していく。自分が描く絵が「何か違う」と思いながら、誰かの役に立ちたいと思いながら、「私なんか」と思ってしまいながら日々奮闘していく。やがて、ダイナマイトを爆発させない為に、宇宙人から告げられた環ちゃんに「して欲しい」ことは、一見あまりにも些細で、でも環ちゃんにとっては残酷過ぎるお願い事だった。果たして環ちゃんは地球を救えるのか? 恋を成就させる事が出来るのか? 素敵な絵を仕上げる事ができるのか?

是非その続きを見届けていただきたい!

以下ネタバレ有(上でもしてたらすいません)

絵文字さえ取り入れているのに、文章の流れとして隅々まで気を使っていらっしゃるみたいだ。じっくり読むのも有り、なんなら飛ばし読みも上等!という雰囲気である。実際「よし、これから小説を読むぞ!」と気負わず読み進めていける文体で、とても難しい事だと思うんだけど、そんなの当たり前〜みたいに書いていらっしゃるのですごいと思う。

それから悪意もあからさまなエロも、もちろん暴力も一切見当たらない。ひたすら徹底して善意と可愛らしさで読み進めてしまう。唯一主人公がブチ切れるのが異物としてのダイナマイトに対してだけである。そこにはブチ切れるに値する理由があるし、だからこそ、そのシーンはとても印象的で胸熱だった。ブチ切れて当然ですよ。めちゃ応援したわ。でも、それですら。

この作品は愛でしかない。
是非御一読を!


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