第一話「お便りお待ちしております」OFF-AIR
「うだぁーー……」
ぷつり、と機器の電源を落とし、私は背もたれによりかかる。
モノの五分程度。だが、自作自演の分。どっと疲れが溜まる。
それでも私が辞めない理由は、楽しいからだ。
喋るのが好きという訳ではない。ただ、自分だったらこんな放送があったらいいのになぁ、と思って始めたら、これが案外楽しくなってきただけの話。
聞いてくれる人が居るかもしれない。
そう思うだけで、励みになる。
それが例え、完全な一方通行であったとしても。
プロの人間は何を思ってしているのだろうか。
素人の私には分からない。ただ、楽しいのだけは間違いないだろう。
収録した音声を確認する。
生き生きと喋る自分の声はまるで別人のように聞こえた。
確認完了。ノイズもないので、今日は無編集で放送できる。
午後六時に放送時刻を設定し、私はぐっと背伸びをする。
「さて、収録も終えたし。帰りますかぁー」
リモコンを手繰り寄せ、エアコンの電源を落とせば、室内から冷気が消えていく。投げっぱなしのスクールバックを背負い直し、スタジオを出る。
「あっちぃ……」
外に出るとセミが鳴いていた。
太陽は降り注ぎ、私を眩しいくらいに照らしつける。また、汗が吹き出し始めた。
反射的に腕で日光を遮り、そのまま家へと駆けだした。
帰ったら風呂に入って、アイスを食べよう。
今日も。
こうして「幸せ」が増えるから。
幸せ放送局、始めました。 麻上篤人 @031-2
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