物語の、その先へ行くために

 本作には、快刀乱麻を断つような答えはなく、「会社が悪い」「同僚が悪い」あるいは「主人公が悪い」……わかりやすい悪者もいない。
 主人公が持つ特徴によって、主人公はもとより、同僚も、会社もそれぞれに苦悩している、その姿が、主人公の言葉を通して描かれている。
 すっきりしない、読後、こころになにかちいさな重しを残してゆくような作品。


 けれど、わかりやすい答えがない、そのこと自体がひとつの答えであるようにも思う。
 物語の、その先に行くためには、「わかりやすい答えがない」と腹をくくることが必要になるはずだから。