君と僕の間には壁がある。

@takechanpan

第1話 出会い

ジメジメとした梅雨の夜、都内の高校に通う17歳・朝倉日向は、いつもと変わらない学校生活を過ごし終えスマートフォン片手にベットに横たわっていた。いつものように動画を見終えた後、現在10代から20代の若い世代に人気の出ているライブ配信アプリ『show live』を開いた。


「さて、今日は誰の配信を見ようかな。亀五郎さんは今日は休みか。」



誰の配信を見ようか迷うこと5分・・・1人の配信者に目が止まった。


「楽?初めて見る子だな。でも、めちゃめちゃ可愛いじゃん」


日向は横たわっていたベットから起き上がり楽の配信を見始めた。配信の内容は視聴者からの質問に答えていくという簡単なものだった。画面に映る彼女は、どこか透明感を感じさせる雰囲気でショートカットにすらっとした鼻、綺麗な二重まぶたにつぶらな瞳、唇の斜め下にあるホクロは色っぽさをも感じさせる。


『美人って、この子みたいな人のことを言うんだろうな。』


ボッソっと日向は呟いた。


日向が、配信を見はじめて気づけば20分が経とうとしていた。変わらず画面の中の彼女は、一つ一つの質問に丁寧に答えている。日向はこの配信で彼女についてわかったことがある。それは、同じ17歳であるということ。九州の離島に住んでいるということ。現在、彼氏はいないということの3つだ。見るだけでは少し退屈になってきた日向は何かコメントしてみようと思い、コメント入力欄を開いた。

しかし、いざ質問しようとするも何を聞こうか迷ってしまい書いては消し、書いては消しを4、5回繰り返した。

すると、画面の中の彼女が


『そろそろ、時間なので最後の質問にしますね』と言った。


『まずい!!』

日向は慌ててコメントを打つ。


[ひなたって呼んでください!]


質問でもなんでもないコメントを慌てて送信した。

気持ちが焦っていた日向にはそのコメントが精一杯だった。

送信してから、日向は必ずしも彼女が自分のコメントを呼んでくれるわけではないと気付いた。それに気付いた瞬間、少し小っ恥ずかしくなった。


その時、画面の中の彼女が


『お〜い!ひなたくん見てる〜??』と


ハニカミながら手を振っている。数秒手を振った後、


『今日はここまでです!見てくれた方ありがとうございました!』と


彼女は締めの挨拶をし配信を終了した。


配信終了後、日向は自分の名前が呼ばれた余韻に浸っていた。

彼女の少しハスキーな声が耳に残り、くしゃっと笑った笑顔を思い出すだけでニヤニヤしてしまう。

コメントとはいえ、同級生の美人の女の子に名前を呼ばれたのは彼女いない歴17年の日向にとっては嬉しすぎる出来事だった。


その喜びを噛み締めながら日向は眠りについた。




















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