ガハハな上司が下ネタでウサ晴らしをする、居酒屋でのひとコマ

ととむん・まむぬーん

それぞれの心象風景

ガハハハ。

さあ遠慮するなよ、財布なんか気にしなくていいからな。

さ、飲んだ、飲んだ。

俺は……そうだなぁ、とりあえず生だな。

お前は?

ん?

飲めない?

おいおい、なんだなんだ、えっ?

ウーロン茶?

ま、仕方ないか、今日び無理いなんかしたら


「パワハラだ――!」


なんて言われるご時世だしな。

で、君は?

おいおい、君もかよ。

ジャスミン茶にするって?

よし、それじゃつまみくらいは豪勢に食ってくれ。


え――っと、俺は、とりあえず枝豆とタコわさかな。

お前は?

鳥唐、それに豆腐サラダか、OK。

それで君は?

なに?

小エビのアヒージョ?

なんだそりゃ、そのアヘアヘってのは……ってそりゃ、まんま下ネタ。

下ネタ禁止だったな、ガハハハ。


よし、それじゃオーダーするか。


「お――い!」


ん?

なんだって?

これ?

このタブレットでオーダーするのか。

なんだか居酒屋なのにちょいと寂しくないか、これ。

えっと、生と、えっと、あれ?

つまみはどうするんだ?

おお、すまんすまん、なるほどな。

よし、これでオーダー完了か。

なるほどなるほど……

でもなんだか味気ないってか、風情もへったくれもないもんだなぁ。

でもまあこれが生産性がなんちゃらってヤツか。

まったくどいつもこいつもバカのひとつ覚えだよな。

ガハハハ。



しっかし今日はまいったよな。

何って言ったっけ、あの野郎、そうそう、アナリストだっけか。


「君ね、君の方法論は聞いてないんだよ」


ってさ、あいつ、俺より歳下ジャンな。

それでさ、


「生産性の向上がすべてなんですよ」


って、俺たちは営業だよ。

生産性、生産性って、モノ作ってんのは他の部署だ、っての。

なあ、そう思わないか?

そもそもお客様あってこその営業だよ。

何度も何度も足運んでさ、顔を覚えてもらってさ、そういうもんだろ?

クーラー効いたオフィスでさ、メールで済まそうなんてさ、そうじゃないよな?

えっ?

なんだよお前らもあのヒョロ長野郎と同じこと言うのかよ?

ん?

まあ、確かに相手の都合も考慮してってのもわからなくはないが……

しかしそれでいいのかよ。


あ――、そんな話してたらあの顔思い出しちゃったよ。

ヒョロっとした風体でさ、おちょぼ口でさ、それにあの上からの態度。

ああいうのをドヤ顔って言うのか?

俺なんかさ、あいつの口を見てたらさ、ケツの穴を想像しちゃったよ。

そうそう、お前ら、こんな話知ってるか?


ピアニストと言えば?

そう、ピアノだよな。

じゃあ、バイオリニストは?

うん、正解、バイオリンだよな。

ならばアナリストってのは?

ふふふ、アナリストだけに、ア、アナ……ま、以下自粛だな。

下ネタ禁止だよな、下ネタは。

ガハハハ……ハハハ……



ん?

どうした?

客からメール?

おいおい夜の9時半だぜ。

ナニ?

取れたのか、あの商談が。

やったじゃないか!

ならばさっそく乾杯するか?

えっ?

まだ確定じゃないって?

そうか、まだ最終コンペに残っただけだってか。

でも、いずれにしても目出度いことだ。

よし、お祝いをかねて次の店に移動するか。

なんだい、ダメです、って。

明日の朝イチで再見積出せって?

ってことは……おいおい、これから会社に戻るのかよ、こんな時間に。

えっ、君もか?

そうか、こいつを手伝うのか。

……よしわかった、行ってこい。頑張ってこい。

あっ、だけどな、終電には遅れるなよ。ちゃんと帰るんだぞ。

それと、何かあったら俺に電話しろ。おっと、メールでもいいぞ。

SNS?

いや……電話かメールにしてくれ。




はぁ――、あいつらもなんとか初の受注が決まりそうだな。

なんだかんだであいつらはあいつらなりに頑張ったってことか。

さてと……

ひょっとしたら相談の電話があるかも知れんし、俺はもう少しここで待つかな。


「すいませ――ん! 生、もう一杯お願いしま――す」




ガハハな上司が下ネタでウサ晴らしをする、居酒屋でのひとコマ

――完――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ガハハな上司が下ネタでウサ晴らしをする、居酒屋でのひとコマ ととむん・まむぬーん @totomn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ