オカルト、ラブコメ、サスペンス、全部入りの気軽に読めるミステリーです
試験も終わった、課題も出した。あとはバイトでもして充実した春休みを過ごそう。開放的な気分に浸る大学三年生の太田ヒロキはふと思い立って地元の大ケヤキ神社を訪れる。
しかしそこで彼を待ち受けていたのは不思議な違和感と突然の怪異だった。タイムスリップにも似たその現象に戸惑いながらもなんとか部屋までたどり着くと、今度はそこに女の子。よもぎと名乗るその娘は大ケヤキ神社の結界に庇護されていた幽霊だった。
波長が合ったから。憑いてきた理由をたったその一言で片付ける彼女の生前は女子高生、幽霊と言えども深夜に女の子を追い出すわけにもいかずヒロキは彼女を受け入れることに。思わぬ展開にドキドキの毎日だったが、やがて二人に魔の手が忍び寄る。
見えない敵に為す術なく困惑するヒロキの前に「見える人」を自称する一年後輩の女子大生、神子薗可憐が現れる。シロと名付けられた一五〇〇年を生きる天狐に護られた彼女は初対面のヒロキのみならず、よもぎのこともこれから起きるであろう災厄のことまでも知っていた。
可憐は経験不足な二人にエクササイズと称した修行をさせる。順調にスキルを積む彼らだったがホワイトデーを迎えたその日、彼らはついに敵と対峙する。強い霊力と複数の霊体を引き連れた相手に怯む彼ら三人を前にして天狐シロは彼らを守るどころか「知恵を出し三人で協力して臨め」とだけ告げて姿を消してしまう。
ヒロキはハーレム男と名付けた敵からよもぎを守らんとその行動パターンを分析しようと試みる。そして周囲からの協力も得て男の追跡を始めるが、しかし相手の方が遥かに上手だった。男の背後には天狐シロに負けず劣らずの存在、妖狐九尾が憑いていたのだ。
男の奇襲に敗れるヒロキだったが、その機会を利用したシロの導きでハーレム男の心象空間に飛び込んでついに九尾と対決、真の敵を打ち破る。
強敵に打ち勝つことができたよもぎはシロからの提言によりいよいよ成仏する道を選ぶ。
ずっと応援してるから。ヒロキと可憐にそう告げて虚空に消えるよもぎ。そして冥界で目を覚ましたよもぎを待っていたのは管理人を名乗る獄卒と禊と呼ばれる試練だった。
しかし九尾成敗に協力したよもぎの功績を評価するシロの後押しでよもぎには禊に代わる使命が与えられる。そしてその命を果たすためよもぎは再び地上に降り立つのだった。
二〇一九年四月三〇日、平成最後の日に完結した作者初の長編作品をリマスター版として加筆・修正、再構成をしたのが本作です。一話あたりの文字数を抑えめにすることでオリジナル版よりも読みやすくできたと自負しております。
オカルトあり、ラブコメあり、サスペンスもバトルも謎解きも、とにかくなんでも詰め込んでしまったご近所ファンタジー風味のミステリー作品をお楽しみください。
※本作はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※作中に喫煙シーンが登場しますが、本作執筆当時の本作の舞台である東京都では飲食店や遊技場などでの喫煙が可能でした。本作ではそれがキーワードとなる場面があるため、リマスター版においても当時のままとしています。
※2022年8月、オリジナル版の公開を終了しました。