一日しか記憶が保たない少年と、謎の美女の奇妙な関係

 ある朝、見知らぬ部屋で目覚めた少年は、自分が何者かをすべて忘れていた。倒れていた彼を保護したという謎の美女は、少年に食事と寝床を与える。のんびりと穏やかな時間を過ごすが、少年は隠されていた日記を見つけてしまう。そこには過去の自分からのメッセージが綴られていた。

 記憶が毎日リセットしてしまう少年と、その少年を自宅に匿う謎の美女の奇妙な関係に引き込まれます。

 家族や親戚もおらず田舎の一軒家で暮らし、普段は優しくお淑やかな女性ですが、買い物に出掛ける以外は、一日のほとんどを少年との二人だけで過ごす。

 少年の存在を周囲にひた隠しにして、毎日同じ生活を何年も続けている美女の狂気にゾッとします。

 散りばめられたヒントを辿って二人の関係に迫るミステリーであり、次第に豹変して本性が見えてくる美女の姿はまさにホラーです。

 といっても、誰かが傷ついたり不幸になったりするわけではありません。テーマはタイトル通り、生きること、そして成長することです。最後には儚くも切ない感動で満たされます。

 真夏の夜に読むのにピッタリな作品です。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)