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アタシはケータイを取り出した。


番号が変わっていないことを願いつつ、ボタンを押した。


『もしもし』


「かっ神沼クン、さっきはゴメンね? ちょっと話があるんだけど、今から大丈夫?」


『いいよ。どこで話そうか?』


どうやらさっきのことは気にしていないみたい。


「じっじゃあ図書室で」


普段、図書室は解放されている。


でも授業中は流石に人はいない。


暗にHRと授業をサボることを言い出しているけれど、彼は、


『分かった。すぐに行くね』


と、すぐに了承した。


彼は真面目で優等生ってワケじゃない。


ちょっと危険なところがあり、そして不真面目な部分もある。


女の子にはそういうところがたまらないらしいけど…。


「アタシにはよく分からないな…」


分からないことを、ちょっと寂しく思う。


まっ、それとこれとは別。


血の気が戻ってきたし、アタシは立ち上がった。


けれどどうしても彼に触れられた手が気持ち悪くて…悪いと思いつつ、トイレで洗った。


ハンドソープまで使って。


あんなにカッコ良いのに…それでもアタシの体は拒絶反応を起こす。


小学生の時は、割と男の子にも触れていた。


でも幼馴染に告白されて、嫌悪を覚えてからは、極力触れないようにしてきた。


触れれば気持ち悪くなるし。


「…やめよ」


これ以上考えると、男嫌いにまで発展する。


気持ちを切り替え、アタシはチャイムの音を聞きながら図書室へ向かった。


図書室は五階にあって、アタシが着いた時にはすでに彼はいた。


「待たせたかな?」


「そんなに」


彼はニコニコと笑顔だ。


でもどことなぁく寒く感じるのは、気のせい?


アタシは深呼吸をして、彼から一定の距離を取って、話し出した。


「あの、ね。昨日言った通り、アタシはまだ誰かと特別な関係になるつもりはないの。だから諦めてくれないかな?」


ここで笑い飛ばしてくれれば、いつもの日常に戻れるはずだった。


自意識過剰だと、言ってほしかったのに…。


「うん、ムリ」


…あっさり却下しやがった。


「なっ何でアタシのこと、好きなの? あなたがアタシの何を知っているの?」


思わず気が立って、こんな言葉が出てしまった。

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