料理の不思議にサイエンスで迫る。しっとり甘いクッキング系百合小説

名知大学・農理学研究棟では最近、「真夜中に刃物を持った不審者がうろついている」という目撃談が囁かれていた。
夜遅くまで研究作業を行っていた博士課程の大学院生・塔山うららは、カップラーメンに注ぐ湯を沸かそうと赴いた休憩室で、ものの見事に噂の不審者と鉢合わせてしまう。
ところが、不審者の正体は鳥見川氷彗という美少女だった。修士課程の一年生である氷彗もまた実験のため遅くまで研究棟に入り浸らねばならず、夜な夜な休憩室で料理を作っていたというのだ……。

――という導入で始まる百合・GL系の現代小説です。

料理は化学実験である、とはしばしば耳にする言説ですが、本作はまさにそのフレーズを地で行く内容。
食材に含まれる成分や調理の過程で生じる化学変化についてなど、料理にまつわるアレコレにサイエンスの側面からアプローチしていくコンセプトとなっています。

また、食卓を共にするにつれて惹かれ合っていく二人の心の動きも見所。
大学院生という比較的高めの年齢設定ゆえか酸っぱさは控えめ、それでいてやっぱりまだ学生ゆえか初々しさも抜けきらない、そんなしっとり甘い百合描写が優しい気分を呼び起こしてくれます。

理系の日常を垣間見ながらてぇてぇ雰囲気に浸りたい方はぜひどうぞ。

※本レビューは「小説家になろう」「ノベルアップ+」にも掲載されています。

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