ヒーローになれなかった男の子たち。

読み終えたときの感情がよく分からない、
救いもない、
でも読み終えたとき、
すごくいいなと思ってしまったのだった。

それはたぶん、
僕も「ヒーローになりたい」と思っていたからかもしれない。
むしろ、そう思わなかった男の子なんていないんじゃないか。
作中に出てくる兄は、日本全国(世界中)どこにでもいた
ふつうの男の子で、当たり前のはずが、当たり前になれなくて、
ヒーローになれなくて、死をえらぶ。

ヒーローになれた男の子もほとんどいなかっただろう。
そのぶんだけ、胸に響く。
兄の姿が自分と相似する。
妹の視点から当たり前に書かれる彼の姿が
オーバーラップしてやさしく感じられるのだ。

思い出せば、ドーナツを食べる場面がすごくよかった。
それは最初に読んだとき、なんでもない場面として読む。
読み終えたときにそれが分かる。
食べることを慰霊と読んでいいなら、
母が望んだように、生きることもまたそうだろう。