ブラキオサウルスとはなんだったのか。

子どものころ、いちばん好きな恐竜がブラキオサウルスだったなあ、と思い出した。
たぶん、みんな、家に恐竜図鑑があったんじゃないかな。
で、それぞれに好きな恐竜がいて。
あなたが一番すきな恐竜はなんでしたか?
たぶん、なんにんかは、僕と同じようにブラキオサウルスをあげるにちがいなくて、
その理由のいくつかは、僕と同じように「いちばんでかいから」なんじゃないかって気がする。

わらっちゃうぐらい、ゆるい理由。

あのブラキオサウルス、もういないんだってよ。
と、この小説で知れたことは、幸福かもしれない。
そして、消えてない、という言葉がつづくとき、
ブラキオサウルスとはなんだったのか、と不安になる。

隠喩であるにはちがいないんだ。
嫌いなあいつだろうか、桜を見せに連れてってくれた彼女だろうか、
あの子だろうか、彼だろうか、それとも。

恐竜の物語と桜の物語が交差し、さいごはそういうふうに終わる。
読者がだれもが思っている、こころのなかのブラキオサウルスが、
ここにいるよ、と、語りかけてくるラストシーンだと思う。