どきどきする読書だった。ストーリーが、とか、人物が、というより、言葉そのものにどきどきした。たとえば言葉が音符であるように、島先生のピアノを聞いているような読書だと思った。島先生は、たぶんそんなに美人でも、立派なひとでもない。たぶん、ピアノもそれほどうまくない。でもきっと、聞くひとを惹きつけてやまないような演奏ができるひとだ。そういうひとに会えて、この小説はよかった。そう思えるひとに会えることが読書なのかもしれない、と思ったりした。「こんなにまじまじと見つめられると、楽譜にでもなった気分だ」の一文がいっとうに好きで、ほかにもさまざまな音楽の表現を味わい、演奏会にいるような、読書だった。もちろん壇上に座ってるひとは決まってる。ふわふわのスカートをととのえて。