誰かを愛し、愛されたい全ての人へ

二組の大学生カップルによる、心の機微を描いた作品です。

よくあるテンプレ(ツンデレとかヤンデレとか)の恋愛要素は皆無で、最初から最後まで、飽くまでも『一人の人間』として登場人物たちは描かれます。
エンタメのためではなく、ドラマのために。そのような丁寧な創り込みが、逆に読者を引っ張り、回り道をしながらも、見事にエンタメとして、この作品を成立させています。

相手を想う。愛する。考える。その尊さ、脆さ、向き合い方、人間の在り方。深く、広く考えさせられる作品です。

また、文章の構造にも唸らされるものがあります。よくぞここまで、人心の細やかな描写ができるものだなあと。それも、平易な言葉を巧みに組み合わせることによって。

単にドラマを楽しむだけでなく、ハイレベルな文章描写の勉強をしたい方にもお薦めです。