【カクヨム三周年記念作品7 最高の目覚め】 続 織姫と彦星

ちーよー

第1話 本編よりもタイトル考えるのに時間かかったけど何も出てこなかった。

 彦星は激怒した。必ず、かのドーパミンとセロトニンに逆らい災いを除かなければならぬと決意した。彦星には天の声の主がわからぬ。彦星は、アルタイルの牛追である。笛を吹き、牛と遊んで暮して来た。けれども織姫に対しては、人一倍に敏感であった。



 くそっ。また天の声に従い、電網浮遊活字世界に戻ってきてしまったようだ。

 俺はただ織姫と2人で暮らしたいだけなのだ。

 それが3万円欲しさに、また呼ばれてしまった。取れる訳もないのに愚かな天により、こうしてお前たちに笑われるのだ。



  俺には嫁がいる。もちろん織姫だ。俺たちの出会いからを少し話そう。



 俺が日課である可愛い牛さんとお散歩中に、いつもの池まで行くと、なんと言うことでしょう。パンツが落ちていたではないか。


 そして近くからは可憐な歌声が聞こえてきた。俺はパンツを思いっきり、握り締めたまま歌声へと近付いていった。



 そこで水浴びをしていたのは髪はシルクの様な美しさ。陽を浴びた白い肌は黄金の様に光輝き、太陽と水と空気を従えた織姫だった。



 簡単に一目惚れなんて言葉では片付けたくない程に、織姫は神々しくもあり艶かしくもあり俺の視線と心を軽々と奪った。ビジュアル的に完璧な理想を体現した女が目の前にいたのだからな。



 そこからの俺は少し様子がおかしかったであろう。何をしていても頭の中には織姫がいた。織姫の笑顔。織姫の困った顔。織姫の怒った顔。色んなシチュエーションで色んな表情を織姫は見せた。



 実際に会った際も目の前でコロコロと表情が変わる織姫に心は奪われたままだった。

 織姫の喜んだ顔が見たい。

 織姫の笑顔が見たい。


 言葉や態度では冷たい事を言っていたかもしれないが、本心はいつでも無条件降伏していた。降伏することで幸福を得ていた。きらん。


 まぁ、とことん行動では激アマだったであろう。


 なんだかんだ織姫のワガママは全て聞いてきた。織姫の為に。と言う理由で叶えられる事を全てやってきた。

 だが、それは俺の為だったんだ。俺が勝手にしたいだけで織姫が笑顔になるなら。って事でやってきた。



 隣で俺にしがみつきながら、今も織姫は眠っている。ここからが本番だ(やらしくない意味で)

 さて……前置きが長くなってしまったな。



 俺は起き上がると、まずは朝御飯を作る。そしてゴミを出しに行く。そうすると織姫が起きてくる時間になり、織姫に朝御飯を食べさせてから洗濯と掃除が待っている。これで午前は終わり、昼飯を軽く織姫に作って上げてから、牛追いに出掛けて戻ってくると織姫の機織の手伝い。それが終わってから風呂を洗い夕食の準備をする。むろん夕食の後片付けは俺がやる。



 織姫は相変わらずビジュアルは俺の完璧な理想であり続けた。だが、俺は昔と違った感情が芽生え始めていた。その事を織姫に正直に伝えたのである。



 俺がやりたいから何でもやって上げていたが、これからは分業しよう。

 予想では織姫から罵詈雑言が浴びせられるかと思ったが。織姫は予想に反して笑顔だった。



「やっと。言ってくれたね。今までは私がやるよ。言っても『大丈夫』の一言だけだったのに、その言葉を待っていたよ」



 なるほど、俺は人形の様に織姫を愛でるだけだったのかもしれない。恋は盲目だ。織姫よりも俺の方が見えてなかったのだ。

 恋人同士ならそれでも良いのかもしれない、だが俺たちは今や夫婦だ。病めるときも健やかなるときも互いに尊敬しあい協力していくべきなのであろう。


 俺たちの夫婦像は俺たちでしか作れない。俺たちだけの夫婦なのだから。



「でも朝食は彦星が作ってね。彦星の淹れたコーヒーの香りで目覚めるのは最高なのよ」



 

 あの日の織姫の言葉。俺は一日の中で朝が一番好きだ。それは今もコーヒーを淹れていると、ベッドでは香りにつられたのかモゾモゾと起きてくる織姫。目を擦りながら眠気眼ねむけまなこで言ってくる


『彦星……おはよぅ』


見てるか天の主よ! お前がどんなに俺たちをもてあそぼうと、どんなに俺たちに嫌がらせをしようと一瞬で吹っ飛ばし、最高の目覚めをプレゼントしてくれる、こいつに誰よりも一番最初に言われる喜び。


 だが。織姫の為に用意した、この淹れたてのコーヒーと一緒で、恋の盲目だけは。

 ……まだまだ覚めそうにもない……


「おはよう。織姫」

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