ペンと紙と英数字

囲会多マッキー

第1話 ペンと紙と英数字

私は昔から計算や独自の公式を作り出すことが得意だ。よって、彼らには到底理解できないであろう式を作り出していたこともある。そんな私を周りの人間は排除しようとしていた。私は「人は合理的な判断ができない」と割り切り、一人ひとり殺していくことにした。


———なぜそんな判断をしたかって?


もちろん合理的な判断のできない奴らが多すぎる。だから、私も合理的ではない方法を用いるつもりだ。私はその事件現場にたった一つだけヒントを遺す。彼らはそんな計算をとけるはずがない。しかし、私を見つけるにはその計算ができなければならないのだ。


———つまり、彼らにとってこの犯罪は完全犯罪となる。


もし私にたどり着けても、私を捕まえるのは不可能だ。証拠もアリバイもしっかりと作ってきている。あとはほとぼりが冷めるまでここに籠っていれば良いのだから。


こんな粗悪な牢に私を入れるなんて「どうぞ、出て行ってください」と言っているようなものだが、彼らはそんなことに気づいていないのだろう。だから、私が罪を犯してもたどり着けない。そんな彼らに何の価値があるのだろうか。私をエゴイストと言ってもらっても構わない。でも、私にはやるべきことがあるのだ。


私が作ったこの公式を認めさせる。それが私がやりたいことだ。今まで、認めることを拒否し続けたあいつらを殺して新しい世の中を作ってやるのだ。


———まずは手始めにあいつから。


それは私の元婚約者だった人だ。しかし、一番最初に私を否定した張本人でもある。実験台にはうってつけの人間だ。私は夜中に牢から抜け出し、ある家に侵入を試みるが失敗に終わる。私の理論は完ぺきだったが、道具が足りなかった。道具があれば私の理論は完ぺきである。


次の晩からは道具を町中から集め、牢の地下に少しずつ隠していった。そして、道具がすべてそろった次の日。


———さあ、理論の証明だ。


この世には運動法則などのたくさんの法則がある。つまり、それを完璧に理解し法則を利用できないように行動すれば良いのだ。


私は玄関から入っていく。幸い、俺と同じ大きさの靴を履いている奴がたくさんいた。あとはそいつらの指紋が付いたものを使っていけば混乱に巻き込まれるはず。


「おはよう、そして久しぶりだな私の婚約者フランチーノ


「な……なんで……どうして……!?」


「サヨナラだ。天罰をくらえ」


手早く仕留めたのち、机の上にある紙にペンを走らせる。これで、この理論が完璧であるという証明になるはずだ。たとえ、彼らが理解できなくても後の世に生きる人間が理解し使ってくれるだろう。


私はゆっくりとその場を離れ、血液や体液で汚れた靴や靴下もすぐに捨てる。牢に戻るころにはすでに日が昇ってしまっていたが、幸い誰にもばれずに戻ることができた。


———さあ、この理論を受け入れるんだ。



数日が経ち、捜査は暗礁に乗り上げたようである。もちろん俺に疑いの目を向けられたりもしたが、すぐに逃れることができた。俺はこの世の中にある膿を書き出さなければならない。だからこそ、この言葉を残す。


———さあ、次の獲物はおまえだ。覚悟しておけ。


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ペンと紙と英数字 囲会多マッキー @makky20030217

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