第2話「完全版」
※第1話で編集する前のものです。KAC4は4000字制限ですが、書いてたら5000になっていました。難しい;;
陽山はるなちゃんは9歳です。
学校のお勉強は大嫌い、なんで勉強なんてするんだろうといつも思ってます。
でも、外で遊ぶのは大好き、学校が終わるとすぐ友達と一緒に公園を駆け回っていました。
でも最近は、みんな習い事を始めてしまい、あんまり一緒に遊んでくれなくなりました。そしてこの日は、誰も一緒に遊んでくれる人はいませんでした。はるなちゃんは絶対習い事なんかしたくありません、だから一人で公園に来ました。
でもやっぱり一人だとすることはありません。仕方なく一人でブランコをこいでいると、公園の片隅で何やら誰かがうずくまってるのが見えました。
おそるおそるはるなちゃんが近づいていくと、それは何やらおばあちゃんのようです。
「どうしたのおばあちゃん大丈夫」
はるなちゃんは慌てて駆け寄ります。
するとおばあちゃんは、驚いた様子ではるなちゃんの方を向いて話します。
「大丈夫だよ……お嬢ちゃんは私が見えるんだね?」
おばあちゃんはおかしなことを言いました。
「見えるよ、何を言ってるのおばあちゃん?」
ふしぎそうに首をかしげながら、はるなちゃんは聞き返します。
「本当に見えるんだねえ、お嬢ちゃんのおかげでおばあちゃんは消えずに済んだんだよ、ほんとうにありがとうねぇ」
そう言って、うずくまっていたおばあちゃんはすっと立ち上がります。どうやら、身体は大丈夫なようです。
「なんだかよくわからないけど、よかったねおばあちゃん」
「お礼にいいものをあげるわ、ちょっとこっちにいらっしゃい」
そういって、おばあちゃんは公園のベンチの方に向かいました。知らない人から物をもらってはいけないと聞いていましたが、割る人でもなさそうなので素直にはるなちゃんはついていきました。
おばあちゃんはベンチに腰をかけ、隣にはるなちゃんも座ります。そしておばあちゃんははるなちゃんに話始めました。
「おばあちゃんはね、魔女なんだよ」
「魔女ぉーー!? おばあちゃん嘘つきぃ、そんなのいないって知ってるもん」
「……そうだねぇ、最近はみんな信じなくなったから、私もみんなに気が付かれなくなっちゃったの。でもはるなちゃんには私が見えるんだね」
「見えるよぉ、なんで?」
「じゃあ、はるなちゃんはまだどこかで、魔女とか魔法とか信じてるんだよ。だからおばあちゃんのことが見えるの」
「……そうかなあ、魔法は信じてるかもしれない。ねぇ、おばあちゃん、ほんとうに魔女なら何か魔法使って見せてよ」
キラキラした目で、はるなちゃんはおばあちゃんを見て、お願いしました。そうです、はるなちゃんは魔法とかがあったらいつもいいなと思ってました、だから今はるなちゃんは期待で胸を膨らませています。
しかし残念そうにおばあちゃんは答えます。
「おばあちゃんはね、もう魔法を使えるほど元気がないの……。みんながもっと魔法を信じてくれないと、魔法は使えないのよ」
「えぇーーっ、ほんとかなあ?」
「……だから代わりにいいものをお嬢ちゃんにあげようね」
そう言って、おばあちゃんはいつの間にか手にしていた紙とペンを、はるなちゃんの手元に差し出しました。おばあちゃんは、バッグとか袋とかを持っていません、いったいどこから出したんでしょう。
「紙と、ペン……これが何なのおばあちゃん」
と言いながらはるなちゃんは紙とペンを受け取りました。
「これはね、魔法の紙とペンなんだよ、はるなちゃん。これに書いたことをはどんなことでもいつかかなうの。素敵なおばあちゃんの魔法でね」
「……えっどんなことでも!? すごい、そんなのもらっていいの、おばあちゃん」
はるなちゃんは、何でも願い事がかなうと聞いて、ますます目をキラキラさせました。
「いいのよ、ただ代わりにたまに魔女のおばあちゃんのことを思い出してね」
「うん! 絶対に思い出すぅー」
「うれしいねぇ、それじゃあもうおうちにお帰り。私と話してるのを他人から見られたらおかしい子に思われちゃうからね」
そういって、おばあちゃんは、はるなちゃんに向かって「バイバイ」と手を振りました。
「うん、またね、おばあちゃん」
「さようなら、はるなちゃん」
そういって、はるなちゃんはおうちに向かって走っていきました。ふと気になって振り返るとおばあちゃんはもうベンチにはいませんでした。
「……あれそういえばなんでおばあちゃんは、私の名前知ってたんだろう」
おうちに帰るとさっそく今日あった出来事を、お母さんに話しました。お母さんは変なおばあさんに騙されたんだなあと思いましたが、楽しそうに話すはるなちゃんの様子を見て、無邪気だなあと笑顔になっていました。
「で、はるちゃんはどんなことを書くのかな」
「うーんとね、イケメン!私にイケメンの彼氏ができるの!」
まさかの最初の願いはイケメンでした、確かに小さいときに仮面ライダーを見ながら、この人はイケメンねとか、言う話を散々してたのはお母さんでしたが、見事な英才教育が成功してたことにお母さんはすこし残念な気持ちになりました。
「あとね、すごく頭良くなりたーい。学校の勉強とか、もう何もしなくても全部わかっちゃって、みんなからはるなちゃんすごいっていわれたーい」
なるほどなるほど、お母さんは納得しました。
勉強が嫌いというよりは、できない自分が嫌なんだなということにも気が付けました。お母さんは、はるなちゃんは勉強すること自体が嫌いだと思っていたので、ここに気が付けただけでも、おばあちゃんに感謝します。
はるなちゃんは今言ったことを、決してきれいではない字で書きだしました。
「お母さんは何か願い事あるの?」
「そうねぇ……」とお母さんは考えながらごく当たり前のことを言いました。
「やはり、お金かしらね。一億円位もらえたら十分かなあ。なんてねぇーー」
ここで、百兆とか言わないあたりお母さんの願い事は妙にリアルな額でした。
それを聞いて、はるなちゃんは、お母さんのお願いごとを書き出しました。
「いっちおく、いっちおくぅー」
お母さんは思いついたように他のお願いも言いました
「あぁ、お父さん。お父さんね最近ちょっと髪の毛やばいじゃない? できれば、素敵なままのお父さんでいてほしいわ」
「そっかあ、お父さんもふさふさになれぇ。ふっさ、ふっさ、ふっさふっさ!」
そして、その白い紙の表面をお願いごとで埋め尽くすと、はるなちゃんはどうやら飽きてしまったようです。
「かなうといいなあ」
数日後、はるなちゃんはお母さんに言いました。
「ねぇ、お母さん。願い事何もかなわないね……。頭良くならないし、イケメンも現れないよ」
「そうねぇ、お母さんも一億円もらえてないわ」
「おばあちゃん嘘つきだったのかなあ…‥」
「そうねぇ」
はるなちゃんは、改めてもらった紙を見つめます。もらった時はあんなにも輝いて見えていたのに、今思えばただの画用紙のようです。どこにでもありそうなものでした。
ふと、はるなちゃんはその紙を裏返すと、そこにはなんだか、怪獣のような大きな生き物がビルの中を暴れまわってる絵が描いてありました。
「あ、絶対龍太の仕業だ!?」
龍太ははるなちゃんの四個下の弟です、クレヨンで落書きをするのが大好きで、目を離すとすぐに何かに絵をかいてしまいます。壁とかテーブルに書くとさすがにこっぴどく怒られることを学びましたが、はるなちゃんは油断していました、この紙は格好の得物です。
はるなちゃんは弟を叱りつけようとすぐに弟の元に向かいました。
そして、やがてはるなちゃんはこの神のことも魔女のおばあちゃんのこともすっかり記憶のどこかにやってしまいました。
十年後、はるなは大学生となっていました。
それもただの大学生ではありません、東大生です。
高校生の時、はるなはいつの間にか、物覚えがよくなり、あらゆることの理解が進むようになりました、気が付けば、高校でトップの成績を取りました。しかも決して進学校とは言えないような学校に通っていたにもかかわらず、なぜか模試で全国100位以内に入ってしまったのです。
「はるないったい、どうしちゃったの、すごーい」
友人は次々とはるなに言いました。
「うーん、なんか覚えちゃうのよね最近」
はるな自身にもよくわかっていなかったけれど、何か急に頭がさえたようになったのです。
「それにさぁ、彼氏も超かっこいいしさあ、だってモデルとかやってるんでしょぉ、マジはるなうらやましい」
と友達は事あるごとにいいます。
はるなが高三の時のある日、駅で電車を待っていると、すらっとした高身長で笑顔が素敵な超絶イケメンにが突然はるなの目前に現れました。
そして「見た瞬間好きだと思いました、付き合ってください」と、はるなは告白されたのです。
はるなは決して美人ではありません、はじめは何かのいたずらだろうと思いました。ですが、実際付き合ってみると彼氏は超優しくて、浮気もせず、はるなに一途なまさにはるなにとっての王子様だったのです。
そしてさらに東大生になった今年8月、彼氏との仲も順風満帆なある日、規制のために実家に帰ると、お母さんとお父さんが神妙な面持ちではるなに話を持ち出しました。
「ど、どうしたの、お母さん}
「……あ、あたったのよ!」
「な、何が……?
「あたったの! 宝くじ、なんと一等、1憶二千万円!」
「えっ、まじ!」
「マジなのよぉ、私たち億万長者よぉ!一枚しか買ってないから前後賞はないけど、ズバリ当てたわーー」
「おかあさんすごい!」
まさかの出来事に、陽野家は大騒ぎです。そう、はるなは最高の人生を送っていました。
帰省中のある日家族でニュースを見ていると、緊急地震速報でもないのにそれと同じ不快な音がテレビから出されました。同時にスマホも、警告音を流し出しました。
『緊急怪獣速報! すでに東京は壊滅状態、近隣の住民は直ちに逃げてください』
何かの冗談だと思いテレビつけるとそこには、すでに焼き尽くされた東京の街の姿と、遠くにみえる謎の巨大生物の姿が映ってました。
そして、その時、外から『ぐぉーーーーーーーっ』という大きな物音が聞こえました。そうです、怪獣ははるなのいる街に近づいていました。
はるなとお母さんは外に向かいます、そして音の方を見ると、遠方に確かに怪獣の姿が見えます。
「なんで、怪獣なんて馬鹿みたいなものが本当に現れるのよ!」
はるなはお母さんになぜか、不平をぶつけました
「仕方ないじゃないとにかくに逃げましょう」
そうです早く逃げなければいけません、ですがいったいどこに逃げろというのでしょう。もはや絶望的な状況だと思い出しました。
しかし、はるなはここで思い出しました、あの怪獣をどこかで見たことがあると。
「ねぇ、お母さん、私が魔女にもらった紙どこにあるの、龍太が落書きしたやつ!」
「何よこんな時に」
「ねぇ、あの紙に書いたこと全部実現してるのそういえば、一億円、イケメンの彼氏、私の頭、お父さんの髪の毛とか、他にもいろいろ!」
「えっ、そんなことって」
「怪獣がいるんだったら、魔女がいてもおかしくないわ」
「あそこよ、小学生の時に龍太が取った絵の賞状の裏側に確か入れたわ」
それを聞いてすぐにはるなは、龍太の部屋に向かいます。お母さんもそれに続きました。
症状を額から外すと、確かにそこにはあの時に魔女からもらった紙がありました。
「早く消しましょう」
お母さんはそういいますが、
「だめ、クレヨンだし消すのなんて間に合わないわ」
すぐさま紙を持ってはるなはキッチンに向かい、ガスコンロに火をかけると、紙をその火にあてて、燃やし始めました。
そして、怪獣の絵が燃え、消えていくのを確認して、はるなは紙を水道の水で消化します。
そして、外に出ると、先に外に出ていたお母さんは、
「はるちゃんはるちゃん、怪獣いなくなったわ」と言いました。お母さんいわくすぐ近くまで来ていた怪獣は、突然燃え上がり始め、すべてチリになって消えたそうです。
「……こんなことあるのね……」
その後、お母さんが当てたとおもってた当選番号はなんと去年のものであることが判明しました。宝くじの発表日を間違えたお母さんは、まちがって去年の番号を今年のあたりだと思っていたのです。
そして急激に物覚えと理解力が悪くなったはるなちゃんは一切東大の授業についていけなくなりやがて退学しました。「仕方ないね」とお母さんは言いました
さらになぜかふさふさだったお父さんはつるピカになってしまいました。
ところが、はるなはイケメン彼氏と結婚することになりました。はるなはイケメンの彼氏だけは失わなかったのです。
「ねぇ、はるちゃんどうして、彼氏ちゃんは残ったのかしら」
「あのね、お母さん……」
そういってはるなは、焦げ跡の残る紙をお母さんに見せました。
「……ここだけ残せたのよ」
そう言ってはるなはにっこり微笑みました。
紙とペンと魔法使いのおばあさん ハイロック @hirock47
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