桃次郎

　鬼退治のその後を描いた作品も、桃太郎以外の視点で書かれた物語も山ほどある。桃太郎の弟が出て来る話も、探せばあるにちがいない。
　そのこすりにこすられた物語を、ちょっとした独自の世界へ変えている点がすばらしい。
　その変え方が、突飛なものではなく、登場人物の個性(言動)の積み重ねなどの結果なので、多くの読み手がついていける。落ち着いた安定した世界になっている。

　カクヨムの読み手は、伸びしろのある作品に惹かれる者が多いように思う。
　言い換えると、作者に才能を感じる作品を好むということだ。
　その点で言っても、この作品はお薦めである。
　本作は、字数制限のある賞に応募しているため、短編の形…続きを読む

桃太郎が鬼退治をして人間の世界は平和になった訳ですが、鬼が島はどうなったと思っている人が居るのではないでしょうか。

倒された鬼はその後どうなった？　その後鬼が島の復興は？

そんな疑問を桃太郎の弟・桃次郎が解決します。

漢気溢れる桃次郎の鬼が島復興物語、ぜひ読んでみてください。

誰もが知っている、あの名作のパロディですが、完成度が高く、全くのオリジナル小説を読んだ気持ちです。
ほとんどの日本人なら、空で語れるあの設定を活かしつつ、物語の視点を少しだけずらして、うまくオチにつなげる作者様の手腕は見事なものです。
さらに、短編ながらも、登場人物たちの個性がしっかり書き分けられていて、覚えやすく親しみも持てるほど、物語全体が肉厚で読み応え抜群です。
ぜひ多くの人に読んでほしい小説です。