誰に裁く権利があるのか

少年3人を殺害した丸山勇。しかし、容疑者である彼も、この少年3人によって息子を殺害されているのだ。
少年3人は勿論罰せられるべき人物であっただろう。
しかし、彼──丸山はどうか?
殺された息子の報復のために少年たちを殺害した。気持ちは痛いほどわかるだろう。
だが、人殺しには変わりない。正当防衛や緊急避難のような自身を守るため仕方なくしてしまったわけではなく、己の憎しみで人を殺めたのだ。行為だけなら死刑に値してしまう。

──けれど本当にこれを“罪”として彼を死刑にしてよいのだろうか?

これは国民が投票によって彼を罰するか決める物語。本当に考えさせられる話でした。

ただ我々に問いかけるだけではなく、学生や小説家や弁護士など様々な死刑権を持った人物によって、死刑という制度について今一度一緒に考える読書体験は読み物としても非常に面白かったです。

個人的に一番苦しい場面だったのは、丸山の「私はね、死刑になりたいんです。死にたいんじゃない、殺されたくないから、法に殺してほしいんです」という言葉でしょうか。
息子を殺され、何も得ない報復という行為を犯した丸山。報復を果たした彼にはもう生きる意味など何もないはずなのに、死刑権という制度の実験体にまでされてしまう。

もし、私が死刑権を持っていたらどうなっていたでしょうか。
感情に流されないでしょうか?
有名人や頭が良い権利者の言葉に流されないでしょうか?
正当に人を裁けるでしょうか?

非常に考えさせられる作品でした。

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