胡蝶の夢。あまりに美しい渾沌。

まず一言。この作品を語るのは難しい。
描かれたこの散文を咀嚼するには、蝶が巻き戻るように何度か読み返し、深く深く物語に入り込まねばならなかった。
そうすると、不思議な死生観に翻弄され、深淵に引きずり込まれる感覚を味わう。

登場人物の自我、夢と現実、過去と未来。そして、いのち。それらの境界が儚く崩れ去り、倒錯し、渾然と混じり合っては収斂してゆく。

この作品を、男性である僕は本質的には理解できないのかもしれない。母親のお腹から産まれはすれど、子どもを身に宿すことがないのだから。

境目のない作品に出会い、現実の隔たりに思いが及ぶ。
それでいいじゃないか。

とにかく、読んでみてください。