主人公に主人公補正がない作品

某なろうにて投稿されていた小説がカクヨムにやってきた。
カテゴリで言えば"勇者にヒロインを寝取られた主人公系小説"である。

『勇者が幼なじみのヒロインを嫁として迎え、主人公がそのヒロインの婚約者でしたが、幼なじみの将来を考えて身を引きました。』
と、概要だけ言えばこれで終わりかねない物語である。少なくとも、歴史の教科書なら年表に一行書いて終わる事象である。

しかし中身を読み進めるうちに、これはそんなカテゴリで語れるレベルではないと気付かされるだろう。現時点では序章しか紹介されていないのでネタバレは避けるが、「手軽にスカッとざまぁ小説」ではないのは確かだ。
努力すればすべて報われ、努力の末に手にした潜在的なチートで無双する、都合の良い奴隷や美幼女系最強亜人を得る…といった夢を、この小説は破壊する。何故なら主人公は無力で、ユニークスキルを与えられてもその使い方が一切わからないためチート無双は全く出来ない根っからの村人であり、覚醒して超絶レベルアップもしないからだ。ひたすらトライアンドエラーを繰り返し、反省し、傷つき、徐々に成長する。所謂ステータス画面等というネトゲ要素も排除されている。徹底的な"現実追及""ファンタジー"である。

タイトルに書いた通り、まさに主人公に主人公補正がないとどうなるかを体現したような小説であると言えるだろう。ハマる人にはとことんハマる。命の重さにリアリティを感じさせるファンタジー小説。LV1村人の成長と苦難を楽しむ勇気のある方には、ぜひ一度手に取って頂きたい。

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