エルシーアという名の美しい海。
そこを舞台に繰り広げられる、「船の精霊」と海を愛する男たちの物語です。
まず船の描写が素晴らしい。作者の船に対する並々ならぬ愛情とこだわりが伝わってきます。
「船の精霊」などの不思議現象も出てはきますが、物語の大半が船と海軍、そして普通の人間たちである軍人・船乗りたちによって紡がれてゆきます。
そのため、異世界ファンタジーではあるけれど、まるで実在した歴史ロマンに触れているよう。
元気で愛らしい少女、「船の精霊」ロワール。
純朴で不器用な青年、シャイン。
この二人の触れ合いがほほえましく可愛らしく、目が離せなくなります。
「艦長」と「船」が絆を誓い合い、まるで結婚式のような儀式を行うだなんて、もうそれだけでロマンチック!
そして私の推し・多少堅物ながらも懐の大きさと気配りでシャインをサポートしてくれる副長・ジャーヴィスさん。
彼らが今後どんな活躍を見せてくれるのか、ドキドキが止まりません!
本当に、皆さまに自信をもってお薦めできる作品です。
海を駆ける「ロワールハイネス号」という小さな縦帆船(スクーナー)を巡る物語です。
主人公であるシャインは、若くして海軍の士官となり、家柄も申し分ない、ある意味恵まれた境遇の青年。
ですが、彼にはその家庭環境故か、何処となく陰りが感じられるのです。
実直で飾ることのない爽やかな好青年の表情の裏に、見え隠れする仄暗い感情。
細やかな心情描写によって、読み手は自然とシャインの二面性に惹きつけられることでしょう。
そして、そんな彼を支えることになる二人の人物は、反面とても真っ直ぐにシャインを見つめてきます。
船の精霊、レイディ・ロワールは天真爛漫な立ち居振る舞いでシャインの心を癒してくれます。
シャインの右腕となる海軍士官ジャーヴィスは、不正を憎む潔癖さと嘘をつけない誠実さで彼の上官を補佐します。
この二人がいればきっと、シャインは苦難を悩みながらも乗り越えていけるのだ、と信じることができます。
彼等のような主要キャラクターは勿論なのですが、他の全ての登場人物が、それぞれの信念や思惑を抱いて行動します。
それを描き切る作者様の文筆力には頭の下がる思いです。
本作は海洋ファンタジーと銘打たれておりますが、心躍るファンタジー要素もさることながら、深く考えさせられる人間群像劇として読み応えのある物語です。
強く強くお勧め致します。
船には、(精霊)レイディが宿っている。
それは、伝説ではなく、
選ばれた人のみ、見れるものでしょうか。
物語を読むと、
特別な人にだけ、見える美しいレイディの姿を、
主人公シャインと共に、見ることが出来ます。
神秘的な、船鐘を廻るファンタジーは、
読む人を、広大な海の冒険へ誘ってくれます。
繰り広げられるのは、
壮大な海を廻る、個性豊かな人物達の織り成す
人生の旅。
海賊たちを廻る、軍との攻防、
迫力ある船上の戦いを、目の当たりにします。
始まりは、ひとつの船鐘と、レイディ。
シャインと運命を共にする、
生涯を歩む、船との出会い。
海洋ファンタジーが好きな方には、
お勧めなことはもちろん、
はじめて、海の世界、船の世界に触れる方にも、
読んでほしい物語です。
船の知識が無くとも、
丁寧に、緻密に描かれる船上の様子は、
新鮮な驚きを持ち、船で歩む時間を
楽しませてくれます。
時に訪れる激しい戦い。
折り重なる思惑と、船鐘を廻る運命が、
交錯し、
シャインとレイディを、運命の渦に巻き込んで行きます。
次第に明らかになる、
物語の全容に、荒波のように激しく、
迫る過去に、
驚くことでしょう。
進む度、待ち受ける波は、
人生の深さを思わせ、
時に涙し、
海の様に深い、愛情に、包まれます。
潮の香と温度。 料理の味覚。
響く、船鐘に、五感で楽しむことが出来ます。
船鐘を廻る、不思議な力。
個性的な登場人物たちは、
それぞれの人生を生き、
正義と悪は、簡単に区切れるものではありません。
海賊たちとの戦い。
胸を焦がすような、身分を超えた恋。
魅力的な要素が詰まり、
飽きさせません。
船が動き出す瞬間。
文字を超えて、目に見える迫力があります。
いつの間にか、シャインの人柄に惹かれ、
この船に、乗り込む、
一員になる思いがします。