第4話 兆し

家に着くと、一階の電気が点いていた。

なんだか嬉しくなって飛ぶようにリビングへ向かうと、夕飯の準備が整っていた。

今日はカレーだ。

帰ってくるともわからない俺の分も。

「いただきます」

ただいまを言った数十秒後にはもうその言葉が出ていた。しっかり手は洗ったさ。




ご飯を食べ終えると、母が妙な話をし始めた。

「クマのぬいぐるみ、もういらないでしょ」

「え?急にどしたの?」

「もうそろそろ捨ててもいいよね」

「嫌だよ」

自分で言っていて少し恥ずかしいが、やっぱりこんなところで本音を隠す気にはなれなかった。それに、今の俺に隠し事なんかできまい。秘密裏に何か作業していても寝てしまったら終わり。

そして何より、大切なものだから捨てるのは嫌だった。

「でも、もういい年頃出し。ね?」

何故今このタイミングでそんなに俺の大切なものを捨てたがるのか全く理解できなかった。確かに既に多大なる迷惑をかけてはいる。しかし、偉そうなものいいをすれば、今ぬいぐるみを捨てるなんて最低な行為だと思う。最も、それは口には出さなかった。

ただ、優しさの塊と言える母がこんなことを言うのには、何か理由があるのだということはなんとなくわかる。そしてだからこそその理由を教えてほしいということが反抗の原動力となっている。

「絶対に嫌だ! 今日も早く寝るから」

結局今夜も、以前では考えられないほど早寝をすることとなったのだが……。

今日もいつものように大好きな白いクマのぬいぐるみとベッドへ。

翌朝、俺は午後4時に起きた。因みに昨日は午後7時半に寝た。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

レイジスリーピネス 変太郎 @uchu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ