青春という言葉がある。それは人生の春にあたる頃。
希望に満ち溢れ、理想を思い描き、異性を求めはじめる。
それが青春。そしてその裏にあるのも青春。
希望なんてない。
理想?
クソ食らえ!
欲しいものが見つからない。なりたい自分がわからない。
目指す先も見当つかない。
憤りは暴力となり、周りを傷つけ自分も傷つく。
出会った金木犀の君にも素直になれず、足掻いて足掻いて、そして歌う。
人の死なんてない。飾り立てられた感動もない。
ただ不器用な少年の荒れた日常の羅列が、どうしてここまで心を穿つのか。
それは読んで確かめてみるといい。
絶対だ。絶対に読んで確かめてみるといい。
私はこの作品に☆を10個つける。
俺はもうぶん殴られたから。
いいか、最悪のネタバレをしてやろう。この物語はハッピーエンドだ。それも極上の。知ってしまったよな? ならもう、読むしかない。
ゲスい鳥瞰視点決めちゃうと、最大限の努力をする二人が結び付けられる、そんな話です。中でも、カンナの頑張りが実はすっげえ涙ぐましいw もちろん周りの人々も頑張ってますし。まぁ、その中にあってじいちゃんとハルトはやや仙人、でしょうかw
ギチギチに塗り固められた、タケルの周りの壁。そいつらをほどくのには多くの葛藤が横たわり、また大きな障害がのしかかる。増黒豊さんの丹念な筆が、その一枚一枚の崩落していくさまを描いてゆく。そのさまをじっくり追えるのは幸せであり、けれどもラストライムが近付いてきてしまうのは寂しくもあり、と、何やら感情が忙しかったです。
なお末筆ですが、以上はまるで枕草子を嗜んでいないもののレビューとなります。
枕草子とヒップホップという、異色の組み合わせで紡がれるアオハルが熱い!
何者にもなれない己に対するやり場のない憤り、自分の心に正直に生きたくとも素直になれない息苦しさ……捻れて歪んで真っ直ぐ前を向けなくなっても尚、どこにあるとも知れない頂上に手を伸ばさずにはいられないタケルに、生々しいまでの青臭さを感じて、吸い込まれるように読み進めながら何度も拳を握り締めてしまいました。
文章にもあちこちにライムが散りばめられていて、バシバシと心を打ってきます。
もちろん、フリースタイルバトルで披露されるラップはさらにホット&クール!
タケルの周囲を取り巻く登場人物達もクセモノ揃いな上に、それぞれ人間らしい魅力に溢れています。
落雷のようなボーイ・ミーツ・ガールから始まる言の葉の律動を、変わる世界の色彩を、繊細と激情に揺れる心のあわいを、どうぞ皆様も体感してください!
アオハルは……いいぞ…………!!