その手に言葉を紡いで

 実体験に基づくドキュメント。カクヨムでは初めて読んだ。本作の最大の特徴は『音』だろう。身動き一つままならない、天井でも眺めるほかしようのない患者にとって、獲得できる最大の刺激は音しかない。匂いや肌触りももちろんあるだろうが、環境が環境なだけにどうしても単調だ。
 本作での『音』は情け容赦なく生々しい。しかし、作者に尊厳をもたらしたのもまた『音』……言葉という名の音であった。