奇妙な憑依現象で、野菜づくりが100倍楽しい!?地球に優しい物語。

とある会社のプロジェクトで、実際に菜園を作り、野菜を育てることになった社員たち。土には親しみのなかった彼らが、指導員の元で「自然に優しい野菜作り」を一から学び、少しずつ自然の仕組みと野菜作りに親しんでいく物語です。
——こう書くとごく平凡な自然派小説ですが、この物語の面白さはそれだけではありません。
畑での作業中に、プロジェクトのメンバーたちが次々と怪しい何かに憑依されるという怪奇現象が発生!クールなイケメンくんが突然オネエ言葉に、ガタイの良いオネエ様がゴリゴリのオジイサマ化してしまい……!?
そんな奇想天外で面白さ満点のストーリーをしっかりと盛り込みつつも、この物語の根底には、野菜作りとは人間中心の生産行為ではなく、自然の力を愛おしみながらその恵みを有り難くいただくことなのだ、という現代社会が決して忘れてはいけない大切なメッセージがしっかりと流れています。
作者様はストーリーの中で非常にハイレベルな野菜作りの知識を惜しみなく披露されています。ただ土や肥料を機械的に使役して作物を生産するのではなく、自然のことを考え、自然と同化するように愛情を持って野菜達を見つめ、育てる。そんな姿勢の一つ一つに驚かされ、深く頷かされます。

野菜には毎日お世話になっているけれど、実際にそれらがどう育っていくのかはよく知らない。そんなある意味傲慢な私たちの目の鱗を楽しく剥ぎ取ってくれる、自然への愛情に満ちた優しい物語です。

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