第1章 感謝

『拝啓 今日も真夏日になりました。もうすぐ猛暑日にもなりそうです。林勇介先生はお元気ですか。夏バテしないように気を付けましょう。』

検索して出てきた例文をちょっとだけアレンジしてみた。時候の挨拶というらしい。こんなものか。あとは、会ってなかった時間の報告を書けばいいのかな。

 『林先生は中学校の部活動の顧問でした。早いもので、私は二十六歳になります。中学を卒業してから十一年の時が経ちました。』

書いているうちに気付いたが、もうそんなに経つのか。時が流れるのは早いものだ。

『あれからもサックスはずっと続けています。高校は、中学の時から入ると言っていたので、知っているとは思いますが、森西もりにし高校の吹奏楽部に入りました。思っていたよりも先輩が厳しく、辞めてしまいたい時もありましたが、先生が頑張ってねとおっしゃった事を思い出して辞めませんでした。コンクールでは思うように結果は出ませんでしたが、吹奏楽部に三年間いられて楽しかったです。その吹奏楽部で同じ名前の親友も出来ました。』

漢字が違うのだけれど、同い年の同じ名前の人に初めて出会えた。そして、結構長く続いている親友のひとりである。

『そして東森中ひがしもりちゅう大学に入学し、吹奏楽ではないのですが、ジャズサークルでサックスパートになり、大学卒業後、今は趣味として続けています。こんなにサックスを続けてこられたのは、サックスを自ら吹いてご指導してくださった先生のおかげです。林先生は私にとって、最初の吹奏楽部の顧問であり、最初のサックスの先生であり、憧れです。それはこれからも変わりません。改めてお礼を申し上げます。ありがとうございます。』

先生に手紙を書いたのは、改めてお礼を言いたかったから。でも、理由はそれだけではない。

さてと、気分転換のためにアイスでも食べるか。私はペンを置き、階段を駆け下りて、アイスを取りに行った。

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最後のラブレター 桜丘 秋奈 @Kurayosi-Akina

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