最後のラブレター

桜丘 秋奈

プロローグ

 私は、ある人へ手紙を書こうと、二階の自分の机の引き出しから真新しい便箋と封筒を取り出し、使い慣れたボールペンをペン立てから取った。さて、何から書こうか。ボールペンのノック音が一人の部屋に響く。隅にいくつか積み重なっているダンボール箱には、まだ中身があり、きちんと整理出来ていない部屋だ。最近、ここに引っ越してきたばかりなのだ。衣類系がまだ片付けられていない。本当は、それをやるべきなのだが、何しろ、手紙を書きたい気分なのだから、しょうがない。

今朝のニュースで昨日から真夏日が続き、そろそろ猛暑日となる日が来るのではないかと言われていた。そんな七月の昼間だ。ボールペンを握る手からじわりと汗が浮き、便箋を軽く湿らす。

 「よし、エアコンをつけよう。」

大きな独り言だが言いたくなった。ほどなくして心地良い風がさらっと肌をなでる。環境は整った。あとは手紙を書くだけ。だが、なかなかペンが進まない。

とりあえず、拝啓から書いて、例文にあるような表現で書いてみよう。私はスマホを取り出し、「手紙 書き出し 挨拶」と検索した。

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