冒頭から全体を通して言葉選びが美しく洗練されていると感じた。不愉快になる瞬間がない。さっぱりとした心理描写が心地よい。登場人物も名前をなんとなく覚えれる程度の、程よい数と人間模様の複雑さで、飽きたり難しくなったりもしない。メインストーリーはありそうでなさそうな、それでいて現実味が溢れてる生活感が好印象。少女の頃に憧れる恋と言うよりは、成人してから憧れる甘酸っぱい恋みたいな。性的な欲求、嫉妬、友情、社会人としての理性などなど、端的であるもののなんとなく共有できる感情表現に、感情移入とはまた別の情が湧くような気持ちを得た。おまけに至るまで、全てが計算されている美しさで、簡単のため息が思わずこぼれた。読み終わりまで手を休めることができず、晩ご飯を逃した。カレーが食べたくなる。
小説で充足を得られたのが久方振りのため、感動を持て余している。読み終えてすぐに同年代の友人に勧めてしまうほど、この小説を気に入った。同作者の他の作品も読むつもり。
大人になって色々と現実に疲れてしまった人たちへ、微睡で得られた幸福な夢ごこちのような気分になれるこの小説を勧めたい。
隣人との恋…近いようで遠い…届きそうで届かない…
なんとも言えない情景に…
まず、各話の表題にグッときます!
動詞で一言!
もう、その一言に、あれやこれやと世界が広がる!
そして、イイ意味で予想を裏切る、斜め上を行く展開!
主人公の心理描写が素晴らしく、思わず同調し、自分が物語の中に居る気持ちにさせられる…
かと思えば…
懐かしい純愛映画を観ながら、こんな恋愛がしてみたい!と憧れる…
けれど、どこにでもありそうなリアルが垣間見られる…
読了後、ジーン、ジワーッと何かが湧き上がってくる!そして、思わず、微笑んでしまう。
とてもステキな時間を過ごす事が出来る。そんな作品。
ひとり暮らしの女性が隣人男性に恋するお話。
全エピソードを通して、女性の心情描写がとにかく美しい。
ささいな日常の一コマを飽きさせないアングルから次々に捉えていく。
初恋のようなひたむきさ、ためらいの気配、すれ違いがもたらす痛ましさ。
どこまでも根を伸ばしていく恋心――
僕自身、こんな素敵な恋愛をしてみたかったと強い憧れを抱きながら読み終えた。
読了からしばらくして妻とのかつての思い出を振り返ると、僕らもまたこの物語に登場する二人と同じようにきらきらと光る煌めきを経験してきたことに気づかされた。
「砂村かいり」という作者はどこにでもありそうな、ありふれた恋をこんなにも愛しい物語としてこの世に残したのかと胸が震えた。
小説をとても久々に読みました。
独り身ということもあり読むと羨ましく、なんとなく寂しくなってしまうので恋愛小説自体避けてきましたが、Twitterで気になり。失礼ながら最初は「こういうの読んで、羨ましくなってどーせ自分は恋愛できない、とか思って途中で読むのやめちゃうんだろな」と期待せず読み始めました。70話一気に読んでしまいました。
好意から恋に至るまでの心の動きや、嫉妬心、、とにかく主人公の心の中が丁寧に、かつ綺麗な言葉選びで描かれています。気づけば主人公の恋を応援していました。
誰かを好きになるという感情、そしてそれが嫉妬心というものも含めて、綺麗で、いとしく、尊いものである、ということを思い起こさせてくれました。また誰かを好きになりたい、そう思わせてくれた作品です。
隣すれ違ったOL。
電車で隣に座るサラリーマン。
ざわめく居酒屋でお酒を飲む大学生たち…
この人たちも自分と同じ今を過ごしているんだと、すんと感じた。
この小説に出てくる人たちは、どこか自分の周りにもいそうな人たちばかり。
愛くるしくて、会ったこともない彼らをとても好きになった。
だから70話があっという間で、もっと続きを読ませてとさえ思ったぐらいだ。
・・・・・
「好きってなんだろう」
「愛するってなんだろう」
と時々思う。
それは考えてもわかるはずがないのかもしれない。
「好き」や「愛」というものに出会って、向き合って、体感しなければ。
いつか出会いたいな。
素朴にそう思えた素敵な物語でした。